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What's New in SURGERY FRONTIER

第70回臓器機能代替と細胞移植 膵島移植の現況と展望

穴澤貴行後藤満一

Surgery Frontier Vol.18 No.3, 76-78, 2011

膵島移植の概要と現況
 膵島移植は,1型糖尿病患者の重症低血糖発作を防ぎ,生活の質を改善し得る治療法で,ドナーより提供された膵臓から,インスリン産生組織である膵島組織のみを特殊な技術を用いて分離し,局所麻酔下に門脈内に輸注する低侵襲な組織移植である1)。1型糖尿病に対する移植医療としては,膵臓移植と膵島移植が行われているが,膵臓移植は,血管の脆弱性を伴う糖尿病患者に対して血管吻合を伴う開腹手術を必要とし,移植術に起因する合併症が危惧される。

膵島移植の概要と現況(続き)

膵島組織のみを1型糖尿病患者の門脈内に点滴の要領で輸注する膵島移植は,膵臓移植にない低侵襲性を長所とする。膵島移植の臨床実施は1970年代から行われたが2),2000年の「エドモントン・プロトコール」の報告3)が1つのブレイクスルーとなった。膵島毒性を有するステロイドを用いずに新鮮膵島単独移植を行い,ダクリズマブ,シロリムスと低用量のカルシニューリンインヒビターでの免疫抑制を行い,異時性に複数回移植するプロトコールで,膵島移植を受けた全員がインスリンより離脱したと報告された。この報告を機に,世界中で膵島移植の臨床応用が進み,本邦でも2003年9月~2007年3月までに,18症例に膵島移植が施行された。これまでの膵島分離回数,移植患者数と移植回数の内訳を図1に示す。

膵島を分離するには,提供された膵に膵島分離用酵素を膵管内注入・膨化後に,消化を行い,その後膵島のみに純化する,という過程が必要である(図2)。

なお,ドナー膵から分離した膵島を移植に供するには,図1中の表に記載した基準を満たす必要がある。本邦では,インスリン離脱の達成は3症例のみにとどまったものの,移植後の膵島生着率は欧米に匹敵するものであり,膵島生着中の血糖制御は良好であることが確認されている4)。なお,本邦では膵島移植は組織移植として分類されており,現状では脳死ドナーは主として膵臓移植に用いられるため,わが国の膵島移植ドナーのほとんどは心停止ドナーで,主に脳死ドナーから摘出した膵臓を利用する欧米諸国とは異なる状況にある。

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