はじめに  本来,人間の腋臭(わきが)は一種のフェロモンとして機能する体臭形質の1つであり,原始時代では異性を引き付けたり,縄張りを主張したりするためのものとして機能していたと考えられる1)。欧米社会では,腋臭形質を持つ者が持たない者の数を上回ることから,ごく一般的な人体形質と見られているため,腋臭症であることを気にする人は少ない。しかし一方,日本社会では腋臭症を嫌う傾向がある。これは,日本社会において腋臭形質を持つ者が少数派であることに起因する2)。その背景には,ある遺伝子の一塩基多型(SNP)の頻度が人種間で大きく異なることが関係している。