Summary  癌遺伝子発見から約半世紀が経ち,癌遺伝子産物の個々の生化学的機能および遺伝子変異の詳細が明らかとなった。今後,これらの知識を抗癌剤の開発へとつなげていくためには,癌遺伝子産物群が作る分子ネットワークの詳細を明らかにするとともに,癌遺伝子産物の活性が細胞内,組織,そして個体内でどのように時空間的に制御されているかを明らかにする必要がある。この目的のために蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の原理に基づくバイオセンサーが開発されている。実際に,個々の細胞での低分子量GTP結合蛋白質Rasやセリン・スレオニンリン酸化酵素Rafをはじめとする癌遺伝子産物の活性を生細胞で観察することが可能になっている。今後,細胞癌化機構の解明やハイスループットスクリーニング系の樹立に貢献するものと期待されている。