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癌と生体イメージング

癌のFRET ライブイメージング

FRET live imaging of cancer

清川悦子上岡裕治松田道行

Surgery Frontier Vol.18 No.1, 9-18, 2011

Summary
 癌遺伝子発見から約半世紀が経ち,癌遺伝子産物の個々の生化学的機能および遺伝子変異の詳細が明らかとなった。今後,これらの知識を抗癌剤の開発へとつなげていくためには,癌遺伝子産物群が作る分子ネットワークの詳細を明らかにするとともに,癌遺伝子産物の活性が細胞内,組織,そして個体内でどのように時空間的に制御されているかを明らかにする必要がある。この目的のために蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の原理に基づくバイオセンサーが開発されている。実際に,個々の細胞での低分子量GTP結合蛋白質Rasやセリン・スレオニンリン酸化酵素Rafをはじめとする癌遺伝子産物の活性を生細胞で観察することが可能になっている。今後,細胞癌化機構の解明やハイスループットスクリーニング系の樹立に貢献するものと期待されている。

Key words
FRET バイオセンサー,癌遺伝子,低分子量GTP 結合蛋白質,Rho

はじめに

 過去四半世紀の癌研究の進歩には目を見張るものがある。その原動力となったのは,癌遺伝子srcの発見であり,分子生物学・遺伝学的解析などの技術の進歩により発展した。これまでに,多くの遺伝子の変異や遺伝子発現の変化が細胞の癌化にかかわることが明らかにされたものの,現時点では個々の遺伝子について記述した百科事典を作っているにすぎず,癌をシステムとして理解するには程遠い。したがって,この膨大な情報を基に癌がなぜ起きるかを体系的に整理・理解し,それに応じた治療法を確立する必要がある。そして,そのためには,これら遺伝子の産物がどのような情報伝達系に位置し,それらが細胞内で時空間的にどのように制御されているのかを知ることが必須である。本稿では,癌遺伝子産物の活性化を細胞内で,あるいは組織内で時空間的に可視化できるFRETバイオセンサーを概説する。バイオセンサーの構造,動作原理,イメージング技術の詳細については,参考文献を参照して頂きたい1)。

FRETイメージング入門

 2つの蛍光分子が近接しているときに,励起された蛍光分子のエネルギーがほかの蛍光分子に無輻射遷移する現象が知られている(図1)1)。

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