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癌と生体イメージング

特集によせて

森正樹

Surgery Frontier Vol.18 No.1, 7-8, 2011

 「癌を生きたまま観察したい!」,あるいは「癌を生け捕りにしたい」長年多くの癌研究者が夢見てきたことと思う。最近のバイオテクノロジーの進歩がそれを可能とし,発生学,再生医学など多くの研究分野で新たな展開を生んでいる。

その基礎となったのは,2008年にノーベル賞を受賞した下村脩博士が発見した緑色蛍光蛋白質(GFP)である。同遺伝子は1992年にクローニングされ,遺伝子工学的手法の発展と相まって,細胞生物学の分野に革命的な技術進歩をもたらした。特定の蛋白質分子を遺伝子操作により,生きている細胞の中で可視化することで,その蛋白質の動態をリアルタイムで観察できるようになった。現在では『Cell』『Nature』『Science』をはじめとする多くのジャーナルで色彩豊かな細胞の写真を楽しむことができる。
 このような蛍光蛋白質の観察が実用的なものになった背景には,顕微鏡などの観察器機の開発が重要な役割を果たしている。digital scanned lightsheet microscope (DSLM),二光子顕微鏡,共焦点顕微鏡などが開発され,実用化されている。特に前二者は深部観察が可能であり,これにより夢であった「癌を生きたまま観察したい!」という願望が実現されることとなった。癌細胞の生体内挙動を観察できるようになり,工夫によってリンパ節転移や骨転移のリアルタイム観察も可能となりつつある。
 「癌細胞を生け捕りにする」ことができれば,試験管内で生きたまま飼いながらの観察も可能であるし,色の着いた癌細胞を生きながらにして治療実験することも可能となると期待される。最近,細胞周期の研究から,静止期細胞のみに現れる蛋白質と活動期細胞のみに現れる蛋白質が同定された。これらの蛋白質をコードする遺伝子に緑色色素の遺伝子,あるいは赤色色素の遺伝子を組み込むことで,細胞周期の動態を観察できるようになった。図1は静止期細胞を赤色,活動期細胞を緑色に染色する方法を用いて,癌細胞の抗癌剤投与後の細胞周期の変化を調べたものである。

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