個体の成長と生命の維持,生殖とはtrade-offの関係にある。つまりヒトおよび動物は生存期間の大部分を個体の成長・維持に心血を注いでいる。これはいわば現実への投資活動といえる。他方,生殖は子孫を残すものであり,当人および当該種の未来への投資といえるが,これには相応の時間やエネルギーを費やすことで,ときに個体の成長・維持を犠牲にすることもある。ただし,生殖へのエネルギーの投資の仕方は性差がある。たとえばメス/女性においては妊娠,出産,授乳などに多大なエネルギーを注ぐが,オス/男性では女性の関心を引くこと,異性をめぐる同性との熾烈な競合,母親と子孫の食糧や居住環境の確保などのために懸命な努力を強いられる*1。ともあれ現実への投資,未来への投資のいずれを選択するかはホルモンに代表される内因性物質が鍵を握っている。
脳におけるエストロゲンの見えざる作用
第24回 テストステロンは恋愛・生殖のイニシエーター
掲載誌
HORMONE FRONTIER IN GYNECOLOGY
Vol.27 No.1 83-87,
2020
著者名
武谷 雄二
記事体裁
コラム
/
抄録
/
連載
疾患領域
代謝・内分泌
/
その他
診療科目
産婦人科
媒体
HORMONE FRONTIER IN GYNECOLOGY
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。