A1:更年期の精神症状は,①更年期症状としての抑うつ気分またはうつ症状,②米国精神医学会のDSM-5で“major depressive disorder”とも併記されるうつ病とに大きく分けられる。女性におけるうつ病の好発年齢はホルモン変動の多い周産期と更年期である。うつ病の発症には脳内のセロトニン系,ノルアドレナリン系の神経伝達物質が関与している。エストロゲンはこれらの神経伝達物質の代謝に影響を与えるとされており,エストロゲンの低下はうつ病発症のリスクを高める1)。また,Rasgonらはエストロゲンの減少そのものよりもむしろエストロゲンの減少によって生じるさまざまな心身症状がうつ病発症の誘因になるとする“ドミノ説”を提唱している2)。実際,女性のうつ病の発症率は男性の2倍である。治療としては,まず患者の訴える多彩な症状のなかで主たる症状が何であるかを明らかにする。そのため,治療の基本は第1に対話療法である。実地臨床では,患者を取り巻く環境,悩み,家庭内の問題など話を聞くことによってだけでも症状はかなり緩和される。薬物療法には大きく分けて①ホルモン補充療法(hormone replacement therapy;HRT),②漢方薬,③向精神薬がある。
ホルモンQ&A
Q1 更年期の精神症状に対する薬物療法について教えてください。/Q2 月経前不快気分障害とホルモンの関係について教えてください。
掲載誌
HORMONE FRONTIER IN GYNECOLOGY
Vol.26 No.1 56-59,
2019
著者名
澤田 健二郎
/
木村 正
記事体裁
連載
/
Q&Aシリーズ
/
抄録
疾患領域
その他
診療科目
産婦人科
媒体
HORMONE FRONTIER IN GYNECOLOGY
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。