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特集 ニューロステロイド

ニューロステロイドと記憶

川戸佳

HORMONE FRONTIER IN GYNECOLOGY Vol.24 No.2, 37-44, 2017

記憶中枢の海馬のグルタミン酸神経は,独自に女性ホルモンであるエストラジオール(E2)や男性ホルモン(テストステロン(testosterone;T),ジヒドロテストステロン(dihydrotestosterone;DHT))を合成している。海馬内での濃度は血中濃度より高く,海馬で合成されるE2,Tは主役である。記憶を形成する神経シナプスは,このE2,T,DHTの神経モジュレーション作用により,シナプス数や記憶の長期増強が1時間以内という短い時間内で制御されている。古典的な内分泌機構ではない地産地消型の神経分泌で,その作用はnon-genomic機構に特色があり,「シナプス後部にある男性・女性ホルモン受容体→蛋白質キナーゼ→アクチン重合→スパイン増加,あるいは蛋白質キナーゼ→グルタミン酸受容体リン酸化」という信号系を動かす。これらの研究成果は,ホルモン補充療法による記憶力の回復,認知症を改善する療法の分子基盤となる。
「KEY WORDS」ニューロステロイド,海馬,記憶,エストラジオール(E2

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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