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脳におけるエストロゲンの見えざる作用

第12回 産後うつ病とホルモン

武谷雄二

HORMONE FRONTIER IN GYNECOLOGY Vol.23 No.4, 82-88, 2016

最近の報道によると,東京都において2005~2014年の10年間に計63名の妊産婦が自ら命を絶ったということである。この数字は分娩周辺期の母体死亡の約2倍に相当する。周産期医療に関わる医療従事者の長年にわたる懸命な努力で世界に誇る極めて低い母体死亡率を達成したわけであるが,知らぬ間に自殺による妊産婦死亡がそれを上回ってしまったことになる。周産期医療の究極的なゴールとは何であるかについて再考を迫る痛心の事実といわざるをえない。妊娠,出産による死亡をさらに低下させる努力を続けるべきであることは当然であるが,一方で妊産婦のメンタルヘルスの問題にこれまで以上に医学的,社会的な関心を高め,対策を講ずる必要がある。妊産婦の自殺のうち,特に出産後に限ると3人に1人は産後のうつ病によるものである。今回産後うつ病の背景にある内分泌学的なメカニズムを考察し,その予防策や対応に関する論議に一石を投じたいと念じている。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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