「Summary」オキシトシンは,主に視床下部で合成され,下垂体後葉から末梢血中に放出されるホルモンである。このオキシトシンは,末梢血中に放出されるだけでなく中枢神経系内にも放出される。また,オキシトシンの古典的な働きは,子宮収縮(分娩)と射乳である。この働き以外に,生殖に関連した行動を含む社会的行動の促進(夫婦の絆の形成,母子絆の形成,母性行動の促進,社会記憶の促進,相手の感情の認知の向上,仲間への信頼感の増加,敵対者に対する排他的行動),社会的緩衝,不安緩解,鎮痛,摂食抑制,エネルギー消費増大が報告されている。さらに近年,抗炎症作用,傷の治癒促進,骨再生,筋再生,心筋再生,神経細胞保護作用,ニューロンの発達への影響が報告された。これらのことから,オキシトシンが高齢者に益をもたらす可能性が注目されている。しかし,報告には矛盾するところもありその作用機序には不明な点が多い。今後の確実な動物を用いた基礎研究の発展が望まれる。
「Key words」オキシトシン,加齢,骨粗鬆症,サルコぺニア,社会行動