特集 女性と脂質代謝
妊娠と脂質代謝
HORMONE FRONTIER IN GYNECOLOGY Vol.20 No.4, 29-33, 2013
「Summary」妊娠中の母体の脂質代謝は糖質代謝と密接な関わりをもつ. 妊娠後半期に生じるインスリン抵抗性は, インスリン作用の低下を介し糖質代謝のみならず脂質代謝にも影響を与える. 糖質代謝では, 母体における糖取り込みを抑え胎盤を通して児への栄養供給を行う点で有利である. 一方脂質代謝では, 妊娠前半期には脂肪合成, 後半期にはインスリン抵抗性により脂肪分解が生じる. すなわち脂肪分解により中性脂肪と脂肪酸が生じるが, 中性脂肪はブドウ糖の基質となるとともに脂肪酸として母体の摂食以外に母児のエネルギーを供給できる点で合目的的である. 「はじめに」妊娠による母体の内分泌系・代謝系のさまざまな変化は直接胎盤を通して胎児に影響を与える. これら母体の生理的諸変化の主なものは胎児の発育にとって合目的的なものである. なかでも糖質代謝においては, 妊娠時の母体ではインスリン抵抗性が生じることによりインスリン分泌の亢進が生じており, 高インスリン血症傾向となることにより両者間の均衡が保たれており, 正常な代謝動態が営まれることによって胎児の子宮内発育にとっても好条件の環境がつくられている.
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。