【特集 女性と脂質代謝】
特集にあたって
掲載誌
HORMONE FRONTIER IN GYNECOLOGY
Vol.20 No.4 10,
2013
著者名
水沼英樹
記事体裁
抄録
疾患領域
循環器
/
代謝・内分泌
/
糖尿病
/
腎臓
/
脳血管障害
/
骨・関節
/
癌
診療科目
循環器内科
/
整形外科
/
産婦人科
/
腎臓内科
/
糖尿病・代謝・内分泌科
/
神経内科
/
腫瘍内科
媒体
HORMONE FRONTIER IN GYNECOLOGY
蛋白質, 炭水化物と並び生体の三大栄養素の一角を占める脂肪は, その単位重量あたりのカロリーが9kcal/kgと他の栄養素に比べて2倍以上も高いことから, 生体ではエネルギーの摂取や貯蔵法として広く利用されている. しかし, 過剰に摂取された脂肪は皮下脂肪, 内臓脂肪として蓄積され肥満と呼ばれる体型変化をもたらすばかりか, 乳癌や卵巣癌, さらには大腸癌のリスクを高めることが示唆されている. また, 内臓に蓄積された脂肪はサイトカインなどの生理活性物質を産生放出し, メタボリックシンドロームの病態形成に重要な役割を演ずることが明らかにされてきた. メタボリックシンドロームは動脈硬化性病変, 特に心筋梗塞, 脳梗塞, 脳出血等わが国の死因の30%を占める疾患の中核的な病態であり, またその存在は骨粗鬆症, 慢性腎不全, 糖尿病等の疾患の増悪因子としても作用してくることが示されてきた. したがって, その予防対策は高齢者の健康維持や改善にもっとも寄与する要因として認識されるようになっている. 一方, 生物から単離される水に溶けない物質は総称して脂質と呼ばれ, 脂肪は脂質の一部を占めるにすぎない. 女性において, エストロゲンと脂質代謝は密接な関係を有し, エストロゲンの低下する閉経後には中性脂肪やLDLコレステロールの増加やHDLコレステロールの低下をきたし, 動脈硬化性疾患の発生に大きな影響をもつようになる. 本特集では, 女性の脂質代謝に焦点をあて, (1)脂質の生理的な貯蔵細胞であり, かつさまざまな病態発生に深い関連をもつことが明らかにされつつある脂肪細胞についての最近の知見, (2)血中に存在する脂質を細胞内に取り込むための受け手となる受容体について, 特に臨床上もっとも重要とされるLDL受容体の発現のメカニズムについての最近の知見, (3)女性の脂質代謝に影響を及ぼすと考えられる薬物や妊娠, 加齢といった女性の生理的変化にともなう脂質代謝について, 女性の脂質代謝を理解するうえで基本となる要点を解説いただいた. そして, 女性のヘルスケアの観点から女性の脂質異常をどう捉え, どのように治療していくか, 薬物療法のコツや食生活の影響について最近の考え方について解説いただいた. いずれの執筆者もその方面の第一線で活躍されている研究者, 臨床家であり, 女性のヘルスケアに携る諸姉諸兄にとって研究や臨床を行うにあたり有用な指針となることを希望している.
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。