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特集 子宮内膜症・子宮腺筋症―最近の話題―

特集にあたって

武谷雄二

HORMONE FRONTIER IN GYNECOLOGY Vol.19 No.4, 9-10, 2012

子宮内膜症と子宮腺筋症はいずれも子宮内膜組織と類似した組織がそれぞれ子宮外, 子宮筋層内に発生し増殖する疾患であり, 組織病理学的に疾患を分類していた時代には同一疾患として扱われていたという歴史がある. しかし, その後両疾患とも文明国において増加の一途をたどり, 臨床像を子細に分析すると好発年齢, リスク因子, 臨床症状などが異なることが示された. また病因病態においても, 完全には解明に至ってはいないが, 少なくとも両疾患では本質的な相違があることが明らかとなった. その結果, 現在ではお互いに独立したclinical entityとしてみなされるようになった. しかしながら, 両者の間には共通点もかなり多い. たとえば, 組織学的所見は発生部位が異なる点を除いては区別が困難な場合もある. 多くの疾患は組織病理学的に特徴づけられるものであるが, どこに発生したかにより病理診断が左右されるというのはきわめて例外的といえる. また, 発生の機序は異にするが, 病巣を構成する細胞の由来は本来の子宮内膜組織である可能性が高い. したがってエストロゲンに依存的に発生, 進展するものである. さらに, 局所における種々のサイトカインの産生とそれらが関与する免疫学的な攪乱の病態への関与, 血管新生の亢進, プロゲステロン感受性の低下およびapoptosis機序の障害なども両疾患でともに観察されている. これらの病態を共有していることは, 治療戦略を考案するうえでも両疾患を一括して扱うことが得策であるといえる. また, 両疾患とも確定診断は病理学的検索に委ねられることになるが, 実地診療においては画像, 触診などにより認識しうる形態の変化に基づいて行われる. しかも, 基本的には良性疾患であり治療を行うか否かは症状の有無, 程度, 患者の選択などを考慮して決定される. 特に両疾患における治療の当否の判断が診断や進行度に基づいて一意的に導きがたいという特徴がある. すなわち治療の決断, その手段において患者自身の選択の余地が大きいということになる. その理由としては, 病理学的に診断しえた病巣が真に"病気"なのか, あるいは非生理学的所見ではあるが, 病理学的所見とは断定しえないものも包含しているという疑義も完全には拭いきれないものがある. このように子宮内膜症と子宮腺筋症は疾患の概念, 臨床の現場での取り扱いなど共通の課題を孕んでいる. そこで本特集ではあえて両疾患を対比させつつ最新の研究の動向を紹介することでこれらの疾患の本態への接近を試みた. この特集が両疾患に関する多くの言説を疾患の真実へと止揚させる大きなステップとなることを期待したい.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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