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性ステロイドホルモン製剤の使い分け

性ステロイドホルモンの臨床応用 (4)早発閉経と性ステロイド

河野康志楢原久司

HORMONE FRONTIER IN GYNECOLOGY Vol.18 No.2, 51-57, 2011

Summary
 卵巣性無月経のなかでも40(43)歳未満で無月経となった早発卵巣不全(早発閉経)は,難治性の排卵障害を呈するが,性ステロイドホルモン製剤,なかでもエストロゲン製剤やゴナドトロピン(Gn)製剤を組み合わせることで排卵誘発が不可能ではない。また,たとえ卵巣機能の回復が望めなくても,エストロゲンをはじめとする性ステロイドホルモン製剤を用いた補充療法は内・外性器の萎縮による性機能の低下やエストロゲンの長期欠如のために起こってくる虚血性心疾患,骨粗鬆症などの疾患の予防に必要である。

Key words
●早発閉経 ●早発卵巣不全 ●排卵誘発 ●ホルモン補充療法

はじめに

 40歳未満の女性に起こる無月経で,内分泌学的にエストロゲン低値でゴナドトロピン(gonadotropin;Gn)高値の卵巣性無月経は早発卵巣不全(premature ovarian failure;POF)と診断される。早発閉経はPOFと同義語として用いられることが多いが,43歳未満で閉経が起きたものをいう。近年のほとんどの論文がPOFで発表されている 1)。本稿では,引用文献との関連でPOFの診断名を用いて述べたい。
 POFの原因には染色体・遺伝子異常による先天異常,自己免疫疾患,感染,医原性(悪性腫瘍患者に対する放射療法および化学療法など)があるが,原因を特定できないことも多い。日常診療でPOFに遭遇した場合,その病態的特徴である低エストロゲン状態を改善させるために,エストロゲンなどの性ステロイドホルモン製剤による治療が行われる。性ステロイドホルモン製剤には従来からある内服薬,注射薬であるデポー製剤に加えて,近年普及した経皮貼付製剤などがある。本稿では,POFに対するこれらの性ステロイドホルモン製剤の使い分けと治療効果の可能性について述べる。

POFの診断と病態生理

 一般的には,40歳未満の続発性無月経,Gn高値,エストロゲン低値の条件を満たす卵巣性排卵障害をPOFと捉えているが,POFの診断については明確な一定の基準はない 1)。POFの診断としては,ほとんどの症例が第2度無月経であり,これまでの報告から①40歳未満で,②6ヵ月以上の続発性無月経,③Gn値は卵胞刺激ホルモン(follicle stimulating hormone;FSH)40mIU/mL以上(少なくとも2回以上測定),④エストロゲン値は20pg/mL以下を満たすものとするものが多い。
 POFでは卵胞発育はきわめて稀に認められるが,大部分の症例では卵胞発育は認められず,排卵誘発も不可能と考えられてきた。しかし,1967年にDe Moraes-Ruehsen とJonesが原始卵胞が存在し排卵誘発が可能な症例を見出し,「the resistant ovary syndrome」として紹介し 2),さらには1969年に3症例を追加報告した 3)。またvan CampenhoutらやKoninckxらは「gonadotropin-resistant ovary syndrome」,Shangoldらは「insensitive ovary syndrome」などの診断名で報告した4)-6)。症例の蓄積により,同じ臨床症状と内分泌学的検査成績でありながら,病理組織学的には卵巣に卵胞が認められる症例と認められない症例が存在することが明らかとなり,前者はpremature menopauseなどという診断名で,後者はGn抵抗性卵巣症候群(Gn-resistant ovary syndrome;Gn-ROS)などの診断名で呼ばれてきた。このようにPOFには病理組織学的に卵巣に卵胞が認められない症例と認められる症例が存在しており,両者は全く異なった独立した疾患なのか,あるいは卵胞が喪失しつつある一過程なのかについては明らかではない。

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