「1 はじめに」肺高血圧症(pulmonary hypertension:PH)はさまざまな病態に伴って発症するが,診療上遭遇することが最も多い基礎疾患は膠原病である.膠原病に伴うPHは特有な病態を呈し,治療や管理が異なるため,PH患者ではまず膠原病の存在を疑い,その検索が必要である.一方,膠原病患者はPHリスクを有するため,診療する医師は常にPHの存在を念頭において早期発見に務めることが求められる.本稿では,膠原病を基礎としたPHの特徴と診療で留意するべき点を概説する.
「膠原病に伴う肺高血圧症(PH)の多様性」成人におけるPHは肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension: PAH)(1群),肺静脈閉塞性疾患(1'群),左心疾患によるPH(2群),肺疾患や低酸素によるPH(3群),慢性血栓塞栓性PH(4群),その他の詳細不明な多因子機序によるPH(5群)に分類される1).膠原病では多彩な病態を反映してこれら全ての臨床分類のPHが生じるだけでなく,複数の病態が共存することも多い.