「論文のポイント」
[1]侵襲的治療を対象とする下肢閉塞性動脈硬化症(ASO)の臨床研究報告では,男性の登録患者数が多く,従来から女性の方がASOの有病率が低いと考えられてきた.しかし,ABI測定で検出されるASOの頻度に男女差はなく,高齢化を迎えた現代社会において,ASOの有病率に男女差はないと考えられる.
[2]ASOの発症に関わるリスクファクターには基本的に男女差はないが,喫煙や脂質異常症の頻度に差があるとされている.
[3]女性ASOは跛行症状を感じる頻度が低く,それは日常生活の活動度・歩行距離の違いや筋肉の代謝の違いなどの影響ではないかとする研究結果が多い.
[4]今後さらに高齢化が進んだ社会においては,ますます高齢女性のASO患者が多発することが予想されることから,高齢女性に特化した啓発,患者教育,1次予防,2次予防戦略が必要と考えられる.
「キーワード」末梢動脈疾患/動脈硬化リスク因子/女性ホルモン/重症虚血肢/ABI