特集 血栓・塞栓症からみた肺高血圧症
Ⅲ.肺血栓塞栓症における凝固・線溶機能 6.抗リン脂質抗体等の自己抗体による肺血栓塞栓症
血栓と循環 Vol.23 No.3, 46-51, 2015
「論文のポイント」
[1]抗リン脂質抗体症候群は,血中に抗リン脂質抗体が証明され,各種動静脈血栓症や妊娠合併症を来す自己免疫疾患である.
[2]APSの動脈血栓症は脳梗塞が多く,静脈血栓症は,下肢の深部静脈血栓症とそれに続発する肺血栓塞栓症が多い.静脈血栓症の約4%に,慢性血栓塞栓性肺高血圧症の10~20%に抗リン脂質抗体が認められるとの報告もある.
[3]抗リン脂質抗体の測定法には,ループスアンチコアグラント,抗カルジオリピン抗体,抗β2グリコプロテインⅠ(β2GPⅠ)抗体があるが,近年ホスファチジルセリン依存性抗プロトロンビン抗体が注目されている.
[4]抗リン脂質抗体による血栓形成機序として,①抗リン脂質抗体の対応抗原であるβ2GPⅠやプロトロンビンなどの機能の修飾,②血小板,血管内皮細胞,単球などの向血栓細胞の活性化,③補体系の活性化,などが考えられている.
[5]抗リン脂質抗体症候群では血栓症の再発が多く,2次予防が重要となる.
「キーワード」抗リン脂質抗体症候群/抗リン脂質抗体/抗カルジオリピン抗体/ループスアンチコアグラント/抗β2グリコプロテインⅠ抗体(β2GPⅠ)/ホスファチジルセリン依存性抗プロトロンビン抗体
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