背景
脳卒中は,本邦の死因の第3位,寝たきりの原因の第1位であり,脳卒中の約7割を脳梗塞が占めている.脳梗塞は,脳血流の途絶による虚血によって脳組織が壊死に陥る病態であり,脳組織の壊死に伴って炎症が惹き起こされる.特に閉塞血管の再還流によって血流が再開されると炎症細胞の浸潤も増大し炎症が拡大する.脳虚血後炎症は病態の悪化,組織の修復に密接に関連しており,脳梗塞患者の予後に大きな影響を与えると考えられるが,脳梗塞における炎症のメカニズムはまだ十分に明らかになっておらず,これを標的とした治療法にも乏しい1).
虚血によって脳組織が壊死に陥ると,マクロファージや好中球などの炎症細胞が脳内に浸潤し,IL-1βやTNF-αなどの炎症性サイトカインを産生して炎症を促進する.われわれはこの過程でIL-23が浸潤マクロファージによって産生され,次にIL-23がやや遅れて脳内に浸潤するγδT細胞からIL-17を産生誘導することによって,さらなる炎症(2次的な組織傷害)を惹き起こすプロセスを明らかにした2).以前より,脳内に浸潤したマクロファージの活性化にはToll様受容体(TLR)を介したシグナルが重要であることが示唆されていたが,その詳細なメカニズムは明らかになっていなかった.
全文記事
遺伝子改変動物から学ぶ血栓症
第33回(最終回) ペルオキシレドキシンを介した虚血後の炎症と脳梗塞
掲載誌
血栓と循環
Vol.20 No.3 4-9,
2012
著者名
七田崇
/
吉村 昭彦
記事体裁
連載
/
全文記事
疾患領域
血液
/
脳血管障害
診療科目
脳神経外科
/
神経内科
/
血液内科
媒体
血栓と循環
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。