データブック アテローム血栓症の大規模臨床試験 PART3
8.薬物療法・副作用など b.副作用 2.チエノピリジン系薬剤による血栓性血小板減少性紫斑病には2つの発症機序が存在する
血栓と循環 Vol.19 No.3, 292-294, 2011
出 典
Bennett CL, et al. SERF-TTP Research Group:
Two mechanistic pathways for thienopyridine-associated thrombotic thrombocytopenic purpura:a report from the SERF-TTP Research Group and the RADAR Project.
J Am Coll Cardiol 50(12):1138-1143, 2007
※図表に関しましては、割愛させていただいております。
要 約
背景
血栓性血小板減少性紫斑病 (thrombotic thrombocytopenic pupura:TTP)は重篤かつ全身性の血栓性細小血管障害であり,臨床症状の特徴として血小板減少症,溶血性貧血,腎機能障害,精神神経症状,発熱を来す疾患である.TTP発症原因の約1/5が薬物であり,そのなかでもチエノピリジン系薬剤であるチクロピジンとクロピドグレルによるものが最も多く報告されており,1998年に60例のチクロピジン関連TTPが報告され,治療として血漿交換導入により高い生存率が得られることが判明した.さらに新規チエノピリジン系薬剤であるクロピドグレルについては2004年に39例のクロピドグレル関連TTPが報告され,その発症頻度は1/10万人であり,内服開始後2週間以内の早期発症例が多く,血漿交換抵抗性で高い死亡率を呈することが明らかとなった.近年,TTPの病因として血管内皮細胞で産生され,血液中に放出された超高分子量VWF重合体 (unusually large-VWF multimers:UL-VWFMs)を切断し,VWF多量体の分子量サイズを調節している酵素であるVWF特異的切断酵素(VWF-cleaving protease:VWF-CP)と同酵素に対するインヒビターであるIgG型自己抗体の存在が明らかとなり,2001年,この酵素はADAMTSファミリー(a disintegrin-like domain, and metalloprotease, with thrombospondin type 1 motif)に属するADAMTS13と命名された.後天性特発性TTPの多くの患者では同インヒビターによりADAMTS13活性が低下していることが明らかとなっており,7名のチクロピジン関連TTP患者においてもその全員にADAMTS13酵素活性の低下と同酵素に対するインヒビターが検出されている.
本論文ではチエノピリジン系薬剤であるチクロピジンならびにクロピドグレルによるTTP発症症例についてそれぞれの薬物ならびにTTP発症時期の違いによる臨床像ならびに予後について検討した.
対象
1998年~2005年のチクロピジンならびにクロピドグレル関連TTP症例であり,米国FDA副作用報告29症例,論文報告40症例,米国血漿交換治療センター8施設症例42例,奈良県立医科大学輸血部症例17例の計128症例を対象とした.
方法
対象症例について性別,年齢,チエノピリジン系薬剤の内服歴,TTPの臨床症状と検査値異常,ADAMTS13活性と同酵素に対する自己抗体の測定,血漿交換療法導入の有無,そして転帰について調査した.
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