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データブック アテローム血栓症の大規模臨床試験 PART3

6.包括的管理・治療 ERFC 7.血中CRP濃度と冠動脈疾患,脳卒中,全死亡リスク:コホート研究に登録された個々の症例データを元にしたメタ解析

北川一夫

血栓と循環 Vol.19 No.3, 226-228, 2011

出 典
Kaptoge S, et al:
C-reactive protein concentration and risk of coronary heart disease, stroke, and mortality: an individual participant meta-analysis.
Lancet 375(9709):132-140, 2010

※図表に関しましては、割愛させていただいております。

要 約

背景

 CRPは肝臓で産生される炎症の鋭敏なマーカー蛋白質である.血中CRP濃度は感染症や組織損傷に際しては1万倍に上昇することがあるが,平常時での年ごとの推移の幅は血中コレステロール値や血圧値と類似している.またCRP蛋白質の凍結血清での安定性や標準化された測定系の存在が研究の推進に役立っている.またCRPはLDLに結合し,アテロームプラーク内に存在することが示され,冠動脈疾患発症に関わっている可能性も指摘されている.これまでの22件の前向き調査研究のメタ解析では,CRP濃度の3分位で最上位群は最下位群に比し冠動脈疾患の発症リスクが1.6倍高いことが示されている.しかしCRP濃度と疾患発症との関連が既知の血管危険因子と独立しているのか,脳卒中各病型と関連しているのか,血管イベントだけではなく非血管イベントとも関連しているのか,CRP濃度と血管イベントとの間に直線的な関連がみられるのかなどの課題について十分に検討されていない.CRP濃度と心血管疾患,主要疾患発症リスクとの関連性は,多数症例を長期観察するコホート研究により,強い統計学的パワーをもって最もよく検討される.

対象

 調査した116件の前向き追跡調査のうち,CRP濃度,年齢,性別,各種動脈硬化危険因子の情報が得られている54件の研究,全体で心血管イベントの既往のない160,309名が登録され,27,769件の非致死性,致死性の血管事故,非血管事故が記録されている集団が対象である.

方法

 CRP濃度の分布は左方偏位しているので,対数変換(loge)することにより正規分布を得た.loge CRPの標準偏差(SD)は1.11で,CRP濃度に換算すると3倍の濃度差になった.1次エンドポイントは,冠動脈疾患の発症で,脳卒中各病型の発症,血管死,非血管事故による死亡についても調査した.loge CRP濃度が1SD増加するごとの疾患発症リスクの増加(相対リスク RR:Relative risk)を,年齢,性別,次いで動脈硬化危険因子,さらに血中炎症関連因子であるフィブリノーゲン値で補正して求めた.

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