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データブック アテローム血栓症の大規模臨床試験 PART3

5.末梢血管・静脈血栓・肺塞栓 9.静脈血栓塞栓症における血漿フィブロネクチン濃度

駒井宏好

血栓と循環 Vol.19 No.3, 192-194, 2011

出 典
Pecheniuk NM, et al:
Elevated plasma fibronectin levels associated with venous thromboembolism.
Thromb Haemost 100(2):224-228, 2008

※図表に関しましては、割愛させていただいております。

要 約

背景

 フィブロネクチンはダイマーとして血中に存在する糖蛋白質である.フィブロネクチンは細胞の接着,遊走および分化などにおいて重要な役割を果たしている.この多彩な作用のため血漿フィブロネクチン濃度は種々の疾患に関連しているといわれている.動脈疾患ではフィブロネクチンが動脈硬化性プラークの形成に関与しているとされ,いくつかの研究では冠動脈疾患と血漿フィブロネクチン濃度との関係が示唆され,また動脈硬化症関連バイオマーカーとの間にも正の相関関係が認められている.フィブロネクチンはまた血液凝固とも関連しており,血栓形成や血小板凝集にも必須であるとされている.昨今動脈血栓症と静脈血栓塞栓症(Venous thromboembolism:VTE)は共通のリスクファクターをもつことが示唆されてきた.そこで今回の研究では血漿フィブロネクチン濃度がVTEに関連することを前向き臨床研究調査において示すことを試みたものである.

材料と方法

 対象患者は現在継続して行われているcase-control studyであるScripps Venous Thrombosis Registryから選ばれた肺血栓塞栓症の有無を問わない深部静脈血栓症患者である.このレジストリーに登録されている患者は55歳未満で発症し3ヵ月以上経過している血栓塞栓症患者のうち3年以上の生命予後を予想され,現在悪性腫瘍の所見がなく脂質低下療法を行っていない患者とされている.年齢と性別をマッチさせた患者を献血者のデータベースより選んで対照群としている.これらの症例の臨床データおよび採取した血液サンプルを当研究に用いた.患者は113例のVTE群で男性49例,女性64例であり,対照群は年齢,性別をマッチさせた113例である.特発性静脈血栓塞栓症は知られているリスクやイベントが発症90日以前に存在しなかった例と定義しこの研究でのVTE群中の49.6%を占めた.対照群との間にはbody mass index(BMI),factor Ⅴ Leiden mutation,血栓症の家族歴,総コレステロール値およびLDLコレステロール値に有意差があったが,喫煙に関しては差はなく糖尿病患者は3例のみであった.
 血漿フィブロネクチン濃度はウサギpolyclonal抗体を用いたELISA法で測定した.正常値は330μg/mLとした.

結果

 対照群に比較するとVTE群では血漿フィブロネクチン値が有意に高い値を示した(正常値に対してのパーセンテージがそれぞれ103%,126%.p<0.0001).特に特発性VTE例では二次性VTEに比べその傾向が顕著であった(図1).
 性別については男性の方が女性より高いフィブロネクチン値を示したが,対照群に比べればVTE群の方がそれぞれでより高い値をとっていた.フィブロネクチン値は年齢およびBMIと有意な正の相関関係が示された.しかし喫煙との関係は明らかではなかった.
 フィブロネクチン値が90パーセンタイル以上のものはVTEのリスクがオッズ比で9.37と有意に高いことが認められた.種々のVTEのリスクの有無で調整したのちも全体のVTE群および特発性VTE例では有意に高いオッズ比を示したが二次性VTE例では有意ではなかった.また男性例では種々の調整後でも有意なオッズ比を示したが女性例では有意ではなかった.

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