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データブック アテローム血栓症の大規模臨床試験 PART3

5.末梢血管・静脈血栓・肺塞栓 2.D-ダイマー上昇は特発性静脈血栓塞栓症の再発を予知する―大規模解析から

市来正隆

血栓と循環 Vol.19 No.3, 174-175, 2011

出 典
Bruinstroop E, et al:
Elevated D-dimer levels predict recurrence in patients with idiopathic venous thromboembolism:a meta-analysis.
J Thromb Haemost 7(4):611-618, 2009

※図表に関しましては、割愛させていただいております。

要 約

背景

 静脈血栓塞栓症の治療は,適切な治療期間はどれくらいがよいのか結論がついていないようにまだ問題が多い.静脈血栓塞栓症の第一の治療目標は再発のリスクを軽減することである.
 静脈血栓塞栓症の患者のさまざまな危険因子について多くの報告がある.特発性の静脈血栓塞栓症を始めて発症後の1年以内に再発するリスクは約5%であり,以後はそのリスクは減少する.
 一過性の原因(外傷やギプス固定)で発症する静脈血栓塞栓症の患者ではそのリスクはさらに低いが,対照的に慢性的な危険因子(抗リン脂質抗体症候群)を有している患者ではそのリスクは逆に高くなる.これら3つのグループの静脈血栓塞栓症患者に対しては,それぞれ異なった治療が適用される.経口抗凝固薬を中止するか服用継続させるかは治療して一年以内の重大な出血事故のリスクが1~3%であるのに対して再発した場合の死亡率が20%であることを考慮して決められる.
 この点で特発性静脈血栓塞栓症のグループでは経口抗凝固薬を継続するか,しないかの決定は最も悩ましい.再発の予知マーカとして年齢,性別,経口凝固薬服用期間,第Ⅷ因子凝固活性,そしてAPTTが挙げられている.D-ダイマーは静脈血栓塞栓症の診断には有用な検査法であるが,予知マーカとして現在は使われていない.経口凝固剤治療中止後のD-ダイマー値が再発の予知マーカに有望であるという新知見が示されてきているが,この点については文献上は十分に証明されていない.ここでは特発性静脈血栓塞栓症患者の再発予防のために服用する経口抗凝固薬服用中止後1ヵ月目のD-ダイマー値が再発予知マーカになりうるかの評価を大規模臨床試験の結果を通じて検討した.

対象と方法

 静脈血栓塞栓症,D-ダイマー,再発というキーワードで2008年3月までのMEDLINE, EMBASE,Cochraneの各データベースから検索した.そして初発で特発性静脈血栓塞栓症患者のうち経口凝固薬治療を受け,その中止後1ヵ月目のD-ダイマー値を測定し再発に対して客観的な診断をしていて,さらにD-ダイマー値の正常群と異常高値に分けて再発の有無を報告している論文について採択し検討することとした.

結果

 キーワードから検索された391の文献のうち,今回の研究の目的の質的評価に耐えうる4つの論文を選択し検討した.D-ダイマー値と特発性静脈血栓塞栓症の再発率を図1に示した.これら4つの論文から経口抗凝固薬服用中止1ヵ月後のD-ダイマー測定の結果からは静脈血栓塞栓症の再発率は上昇群では125/751(16.6%),正常群では57/788(7.2%)とD-ダイマー値が上昇している群で有意差をもって再発との関連が認められた.

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