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データブック アテローム血栓症の大規模臨床試験 PART3

3.脳 d.脳梗塞の血栓溶解療法 ECASSⅢ 2.発症3~4.5時間以内の急性期脳梗塞例に対するアルテプラーゼを用いた経静脈的血栓溶解療法

青木淳哉木村和美

血栓と循環 Vol.19 No.3, 158-160, 2011

出 典
Hacke W, et al:
Thrombolysis with alteplase 3 to 4.5 hours after acute ischemic stroke.
N Engl J Med 359(13):1317-1329, 2008

※図表に関しましては、割愛させていただいております。

要 約

背景

 1995年,National Institute of Neurological Disorders and Stroke(NINDS)studyは発症3時間以内の脳梗塞例に対するアルテプラーゼを用いた経静脈的血栓溶解療法(アルテプラーゼ静注療法)はプラセボ群と比較し,3ヵ月後の転帰良好例(modified Rankin Scale[mRS]:0-1)を30%以上増加させると示した.以降,同療法は世界で広く急性期脳梗塞例に対する第1選択の治療法として用いられている.しかし,実際に同療法を施行された脳梗塞例は全体の2%以下に留まる.その最大の理由は医療機関に到着する前に3時間が経過してしまうことである.ヨーロッパでは1995年と1998年に,発症6時間以内の脳梗塞例を対象としたEuropean Cooperative Acute Stroke Study(ECASS),ECASS Ⅱが報告されたが,いずれも単独では有効性を証明することはできなかった.しかしNINDS study,ECASS,ECASS Ⅱなど6つのランダム化試験に登録された2,775例のメタ解析は,発症3~4.5時間以内のアルテプラーゼ静注療法は,プラセボと比較しオッズ比1.4で転帰良好例を増やす可能性があると示した.European Medicines Agency(EMEA)は2002年,ヨーロッパで発症3時間以内の脳梗塞例に対するアルテプラーゼ静注療法を認可した際に,①安全性を確認する観察研究を行うこと,②適応時間の拡大の是非を検証する臨床研究を行うことを条件とした.観察研究としてはSafe Implementation of Thrombolysis in Stroke Monitoring Studyが行われ14ヵ国285施設から6,483例が登録され,同療法の安全性と有効性が確認された.本稿で紹介する臨床試験(ECASS Ⅲ)は,EMEAの求めに応じ,アルテプラーゼ静注療法の適応時間を有効かつ安全に発症3時間以内から4.5時間以内に延長できるか検証した研究である.

対象

 2003年7月~2007年11月までにヨーロッパ19ヵ国130施設で行われた.発症3~4.5時間以内にアルテプラーゼ静注療法が開始できると判定された821例が対象となった.18歳未満,81歳以上,経口抗凝固薬内服例,National Institute of Health stroke scale(NIHSS)スコア26点以上,脳卒中と糖尿病の両方の既往がある症例は除外された.

方法

 治験者に数を伏せたブロックランダム化をコンピュータで行いアルテプラーゼ静注療法群(アルテプラーゼ群)とプラセボ群が1:1になるよう割り付けた.418例がアルテプラーゼ群,403例がプラセボ群であった.アルテプラーゼまたはプラセボは10%をボーラスで投与され,残りの90%は60分以上かけて経静脈的に持続投与された.入院24時間以内のヘパリン静注療法や経口抗凝固薬,アスピリン,血漿増量薬の投与は禁止された,深部静脈血栓予防目的のへパリン皮下注射や同等の低分子ヘパリン療法は許可された.CTまたはMRIは治療前と治療22~36時間後に行われた.主要有効性エンドポイントは90日後の転帰良好(mRS:0-1),主要安全性エンドポイントは90日後の死亡,頭蓋内出血,症候性脳浮腫,および他の重篤な副作用とした.分析はintention to treat analysis(ITT解析)で行われた.

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