§論文のポイント
[1]血管の内面は血管内皮細胞にて覆われており,血管内皮細胞の抗血栓性を示す.その機能が正常であれば内皮細胞上での血小板付着,凝集,凝固系活性化は起きない.
[2]内皮細胞の抗血栓性に寄与する因子の主要なものとして内皮細胞由来平滑筋弛緩因子(EDRF,NO),プロスタサイクリン(prostacyclin, PGI2),ecto-ADPaseがある.
[3]血管傷害が起きると,血管内皮下組織のコラーゲンが露出し,また破壊された細胞からはADPが漏れ出し,また凝固系の活性化によりトロンビンが産生される.これらの物質はすべて血小板を活性化する.
[4]血小板膜糖蛋白GPⅡb/Ⅲaはすべての血小板活性化物質による血小板凝集の共通の最終経路にあるため,GPⅡb/Ⅲaをターゲットとして,抗血小板薬が開発されてきた.しかし,日本では使用できない状態である.
[5]TXA2は多くの血小板活性化物質の作用を増強することが知られており,TXA2の産生を抑制する薬剤は,生体内における多様な状況における血小板活性化を阻害することが期待される.アスピリンはCOX-1を阻害し,TXA2の産生を抑制する.
[6]P2Y12受容体は血小板に特異的に発現しているADP受容体であり,種々の系における血小板機能亢進に重要な役割りを果たす.チエノピリジン系の薬剤はこのP2Y12受容体を阻害して,血小板活性化を抑制する.
§キーワード 血管内皮/コラーゲン/ADP/トロンビン/GPⅡb/Ⅲa/アスピリン/チエノピリジン