はじめに
脳へは心拍出量の約15%もの血流が賄われている.体重の2%程の臓器である脳にこれだけ豊富な血流が供給される理由は,脳がvital organであり,その活動維持に多くのエネルギーを要するためにほかならない.すなわち神経活動の本態である膜電位を作り出すために多大なATPが必要で,その源として常にブドウ糖と酸素を消費するためである.一方,脳内にはこれらの基質を十分にストックしておくメカニズムが備わっておらず,高度の虚血は早期に不可逆的な神経細胞の障害をもたらす.このため,脳には血流維持のためのさまざまな機能が備わっている.その1つが解剖学的にはWillis動脈輪であり,主幹動脈の血流障害に対して左右の大脳半球間の,あるいは前後方の循環系間の側副血行の形成を潜在的に容易にしている.生理学的には脳血流自動調節能をはじめとした血流調節機構が挙げられる.代謝や血行動態の変化などさまざまな刺激は迅速,かつ柔軟に血管径を変化させ,組織に必要な血流を維持する.近年脳の生理機構を捉える場合,“neurovascular unit”として神経細胞や血管内皮細胞,周皮細胞,グリアなどが織り成すユニットとしての機能が注目されているが,脳血流の調節に対する脳動脈内皮細胞の果たす役割は非常に大きい.本稿では内皮機能の評価に関して実験ならびに臨床面における概略を述べたい.
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血栓と循環の検査法
第45回 血管内皮機能シリーズNo.10 脳動脈における血管内皮機能測定
掲載誌
血栓と循環
Vol.19 No.1 237-240,
2011
著者名
北山次郎
/
北園 孝成
記事体裁
連載
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全文記事
疾患領域
血液
/
脳血管障害
診療科目
脳神経外科
/
神経内科
/
血液内科
媒体
血栓と循環
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。