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血栓症に関するQ&A PART6

8.薬剤 Q64 トロンボモジュリンの血栓症治療薬としての有用性についてご説明ください

丸山征郎

血栓と循環 Vol.19 No.1, 212-214, 2011

Answer
トロンボモジュリン(thrombomodulin:TM)の機能

 トロンボモジュリン(thrombomodulin:TM)は,凝固酵素トロンビンを抗凝固酵素へと変換する内皮細胞上の膜蛋白である.すなわち凝固カスケードの最終産物トロンビンはフィブリン形成,血小板活性化,凝固第Ⅴ,Ⅷ因子などの活性化などを介し,血栓形成に極めて重要な働きをするが,TMと結合すると,これらの血栓形成的な活性は全く消失し,逆にTM上のトロンビンの近傍に結合したプロテインC(PC)を効率よく活性化する.活性化PC(APC)は,図1に示したように,活性化第Ⅴ,活性化Ⅷ因子を分解し,凝固カスケードにネガティブフィードバックをかけるほか,受容体EPCR上のAPCはPAR-1(protease activated receptor-1) を介して細胞保護,抗アポトーシス,抗炎症的に作用する1)2).

 その他に著者らは,TMのN末端レクチン様ドメインにDAMPs(damaged associated molecular patterns)の代表であるHMGB1の炎症活性をブロックすることを見出している3).このようにTMは血管内皮細胞上で抗凝固,抗炎症,細胞保護に働く膜蛋白である.

遺伝子組換えTM(recombinant TM:rTM)

 われわれ(重大鈴木宏治博士,旭化成工業グループ)はヒトTM遺伝子のクローニングに成功し,TM遺伝子蛋白をCHO細胞(チャイニーズハムスター卵巣細胞)に組換えた遺伝子組換え体ヒトTM(ART123,rTM)を作製した4).この遺伝子組換えTMは現在リコモジュリンという商品名で世界に先駆けて商品化されている(図2).

ヒトTMは図1Aに示したような構造をし,D1, D2, D3, D4, D5 の5つのドメインから成るが,遺伝子組換えTMはこのうちD4, D5 ドメインを欠いたものである(図1B).

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