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血栓症に関するQ&A PART6

7.腎疾患 Q55 高齢透析患者の内シャントが閉塞しやすい理由と,予防・治療対策について教えてください

近藤大介

血栓と循環 Vol.19 No.1, 183-185, 2011

Answer
はじめに

 慢性維持透析症例は2009年末で全国29万人を超え,30万人突破も時間の問題となっている.また透析患者の平均年齢は65歳を超え,糖尿病性腎症,腎硬化症といった血管合併症をもつ症例が増加してきている.
 内シャントをはじめとするバスキュラーアクセスは,透析患者にとって命綱ともいうべきものであるが,患者の高齢化,透析の長期化に伴いアクセストラブルを発生する頻度が高くなると考えられる.代表的なバスキュラーアクセスである動静脈吻合(arteriovenous fistula:AVF)による内シャントは長期開存性,感染面などで優れ,最も推奨されているが,高齢者においては開存率が低いと報告されている1)2).本稿では,高齢者透析者の特徴とアクセスとの関連,アクセス作成・管理における留意点などについて考えてみたい.

バスキュラーアクセスに影響を及ぼす高齢透析者の特徴

1.動脈硬化

 高齢者は,長年にわたる高血圧,糖尿病,腎不全などの病態により動脈硬化が進行しているが,さらに透析が長期化することにより,透析膜や透析液などとの接触による慢性炎症や酸化ストレスが動脈硬化を進展させ,さらにカルシウム・リン代謝異常により動脈壁の石灰化も加わってくる.高齢者で新たに動静脈吻合によるバスキュラーアクセスを設置する場合,動脈硬化や石灰化などのため内腔が狭小化,もしくはすでに閉塞しており,末梢でのAVF作成を断念しなければならないこともある.またAVFを作成しても動脈からの血流供給が少なくシャント静脈の発達が不良であったり,末梢の動脈灌流が低下してスティール症候群を生ずるおそれもある.

2.静脈の脆弱化

 腎不全進行までの間に,さまざまな疾病により入退院を繰り返していることも多く,その際輸液などのために前腕の皮静脈が頻回に穿刺され,荒廃していることも珍しくない.また,過去のステロイド治療等の影響により皮膚や血管が脆弱化し,アクセス作成時の手技や術後の管理にも影響を及ぼす.

3.心機能低下

 高齢者の心機能は,左室収縮能,拡張能ともに低下し,予備能低下の状態にあるため,透析時の除水などにより容易に血圧低下を来しやすい.若年者では循環血液量が15~20%低下すると急激な血圧低下を来すが,高齢者・心機能低下症例では5~10%程度の減少でも血圧低下を来し透析が続行できなくなることもある.血圧低下時には,シャント血流も著明に低下するため,頻回の血圧低下を来す症例においては,透析中や透析後に内シャントの急性閉塞を引き起こしやすい.

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