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血栓症に関するQ&A PART6

6.末梢血管・深部静脈血栓症・肺塞栓症 Q49 静脈血栓後症候群の評価のしかたをご解説ください

細井温

血栓と循環 Vol.19 No.1, 165-167, 2011

Answer
はじめに

 静脈血栓後症候群(postthrombotic syndrome:PTS)は,深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:DVT)の晩期合併症として以前より知られており,初期の臨床研究1)ではDVT患者の80%以上で15年間の経過観察期間中にうっ滞性潰瘍を併発したと報告されている.近年,DVTに対する診断技術の向上や初期治療法の確立などにより潰瘍を伴う重症例の頻度は激減したが,最近の報告でもDVT発症後のPTSの発生頻度は20~50% 2)-4)とされており,実際に相当数の患者が現在でも本症候群に罹患しているものと考えられる.また,QOLに関する最近の検討5)6)で,他の一般的な疾患と比較してもPTS症例のQOLが低く,長期にわたり罹患患者のADLに影響を及ぼしていることが明らかとなり,欧米ではDVT合併症としてのPTSに対する予防,治療,管理が重要視されつつある.
 一方でPTSは,明らかなDVTの既往を有し,浮腫,疼痛,湿疹,皮膚硬結,色素沈着,潰瘍,静脈性跛行などを認める慢性静脈疾患と定義されるが,“症候群”という名が示すとおり症状・徴候に幅があり,個々の患者によって重症度が大きく異なる点が特徴である.それゆえ,現状ではgold standardといえる明確な診断基準や適切な評価法が確立されておらず,この点もPTSの診療,研究における大きな課題となっている.本稿では,PTSに対する臨床的診断法,評価法について概説するとともに,評価の標準化に向けた最近の欧米の動向についてもふれる.

PTSに対する臨床診断と評価

 前述したように,PTSは特有の症状や徴候に規定される症候群であり,これらの臨床的な構成要素をツールとしてPTSを診断,評価することは理にかなっていると考えられる.現在までにPTSの臨床研究において数種類の診断基準が提案されているが,なかでもQOLとの関連性の観点から,CEAP分類およびこれに付随するvenous clinical severity score(VCSS)とVillalta scaleがPTSの評価法として用いられている.

1.CEAP分類およびVenous Clinical Severity Score(VCSS)

 CEAP分類は,慢性静脈疾患に対する臨床的な重症度分類を標準化する目的で考案されたもので,2004年の改訂版7)では臨床的徴候をもとに8段階に分類されている(表1).

本分類は,静脈疾患の研究において今や全世界的に汎用されており,その有用性は極めて高いが,PTSの評価・診断に用いる場合にはいくつかの問題点が指摘されている.すなわち,(1)CEAPの重症度分類は臨床徴候のみを基本とするものであり,臨床症状とその程度が反映されていない点,(2)分類に関与する臨床的要素のなかに変化の乏しい項目(色素沈着や潰瘍瘢痕など)が含まれているために経時的変化や治療効果の評価が困難である点,(3)元来カテゴリカルな分類であり,定量的評価ができない点などが挙げられている.
 VCSS 8)は,CEAP分類の要素を基礎として治療などに対する変化を反映しうる新たな項目を組み入れて点数化し,慢性静脈疾患の重症度を定量的に評価可能としたものである(表2).

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