Answer はじめに  近年,突然死の原因にもなるエコノミークラス症候群の名がマスコミで取り上げられるようになり,下肢深部静脈血栓症に伴う肺血栓塞栓症の危険が一般の方にも広くかつ過剰に意識されている感がある.そのため致死的肺塞栓の予防に意識が傾くあまり,“下肢深部静脈血栓症=下大静脈フィルター挿入の適応”のごとき問い合わせが多いのも事実である.しかし,下大静脈フィルターの適応や有効性については,いまだ十分なエビデンスがないというのが実状である.そもそも急性肺血栓塞栓症予防の原則はへパリンやワルファリンを使った抗凝固療法であり,下大静脈フィルターは抗凝固療法が不可能あるいは無効な場合に適応を考慮すべき医療器具である.