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血栓症に関するQ&A PART6

6.末梢血管・深部静脈血栓症・肺塞栓症 Q47 下肢深部静脈血栓症でフィルター挿入の適応をご教示ください

岡本宏之

血栓と循環 Vol.19 No.1, 161-162, 2011

Answer
はじめに

 近年,突然死の原因にもなるエコノミークラス症候群の名がマスコミで取り上げられるようになり,下肢深部静脈血栓症に伴う肺血栓塞栓症の危険が一般の方にも広くかつ過剰に意識されている感がある.そのため致死的肺塞栓の予防に意識が傾くあまり,“下肢深部静脈血栓症=下大静脈フィルター挿入の適応”のごとき問い合わせが多いのも事実である.しかし,下大静脈フィルターの適応や有効性については,いまだ十分なエビデンスがないというのが実状である.そもそも急性肺血栓塞栓症予防の原則はへパリンやワルファリンを使った抗凝固療法であり,下大静脈フィルターは抗凝固療法が不可能あるいは無効な場合に適応を考慮すべき医療器具である.

では実際にどのような患者に下大静脈フィルターを挿入するべきなのか

 日本循環器学会の肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断,治療,予防に関するガイドラインや欧米の主なガイドライン1)2)を総合すると,抗凝固療法をしても再発する肺塞栓症,急性の肺塞栓症を起こしているのに出血やその他の理由で抗凝固療法ができない症例がフィルターの絶対適応となる.これについてはあまり異論のないところである.しかしフィルター挿入の判断に困るのは,相対適応,予防的適応といわれるもので,具体的には以下のものがある.
(1)近位静脈に浮遊血栓を認める症例.
(2)心肺機能に余力のない静脈血栓塞栓症例.
(3)静脈血栓塞栓症ハイリスクの術前症例.
 これらについては,抗凝固療法に加えてフィルターを入れる有効性について全くエビデンスがなく,各施設,各医師の経験や印象に判断が委ねられている.
 現在,永久留置型でも回収可能オプションがあるものが普及してきており,フィルター挿入の適応はやや拡大の方向に進んでいる.しかしフィルター挿入の臨床成績は,肺塞栓の予防効果と合併症のバランスで議論されなければならず,長期的には肺塞栓の予防効果に差がなく深部静脈血栓症の再発率が高いことなどから3),安易な下大静脈フィルターの挿入は慎まねばならない.

症 例

 33歳,女性.子宮頸癌(Ⅳb)の術前CTで外腸骨静脈内血栓と肺塞栓を指摘された.手術操作が静脈血栓部位に及ぶこと,担癌状態で今後も静脈血栓塞栓症のリスクが高いことを考慮し術前に回収可能型フィルターを挿入した(図1).

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