血栓症に関するQ&A PART6
6.末梢血管・深部静脈血栓症・肺塞栓症 Q45 WIQについて具体的に教えてください
血栓と循環 Vol.19 No.1, 154-157, 2011
Answer
Walking Impairment Questionnaire(WIQ)とは,peripheral arterial disease(PAD)での自覚症状の1つである「間歇性跛行」を訴える患者さんを対象に用いる「歩行能力を患者自身で評価できる質問表」のことである.
その開発の経緯を述べると,跛行の治療効果を評価する際に応用できる指標には種々の症状,所見,検査指標,さらにQuality of life(QOL)評価などが用いられている(表1).
それらの中で,特に間歇性跛行での「歩行能力測定」は「トレッドミル運動負荷試験」を用いて歩行距離等を測定することで評価することが重要とされてきた.しかし,検査室での評価が,そのまま日常生活における歩行能力を正確に反映しているとは言い難いという面があった.また,トレッドミル装置がない,または検査のためのスタッフがいない医療機関においては検査が実施できない状況であり,臨床試験や疫学研究においても実用的とはいえないという面もあった.
それらの状況を改善すべく,米国のHiattらによって,より簡便で,患者自身が歩行能力を評価できる質問票として,まず米国でWIQ(英語版)として開発された.そのWIQは,2000年に報告されたTransAtlantic Inter-Society Consensus(TASC)においても推奨され,英語以外にも6ヵ国語に翻訳され,国際的に広く使用されるようになった.そこで,日本脈管学会も,本邦で使用可能な「WIQ日本語版」を開発することになり,その際,欧米との言語の違いによる調整を日米での2ヵ国間で実施し,さらにトレッドミルとの比較も独自に行い,WIQ日本語版の有効性が立証された(図1) 1).
すなわち,ベースラインのWIQ質問票による「歩行距離スコア」と「最大歩行時間」(peak walking time:PWT)との相関係数は r =0.69(p<0.001)で,両者の間には有意な正の相関関係が認められ,欧米とのデータとも同等であった.
WIQの質問内容は,まず歩行障害部位について尋ね,次いでPADと他の原因(関節痛,肺疾患,心疾患など)とを鑑別する項目がある(表2a).
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※記事の内容は雑誌掲載時のものです。