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血栓症に関するQ&A PART6

4.心臓 Q36 冠状動脈のステント留置部の再狭窄・血栓形成の機序について教えてください

石川由起雄深澤由里

血栓と循環 Vol.19 No.1, 126-128, 2011

Answer
ステントの種類による動脈内膜のremodelingの相違

 冠状動脈の狭窄部へのステント留置自体が,動脈の内膜および中膜への挫滅をもたらす.留置されたbare metal stent(BMS)のストラット周囲には,直後よりフィブリン血栓が形成される.生体組織にとってステント自体は異物であり,ストラット周囲には異物反応が生じ,ストラット周囲に異物型多核巨細胞が出現することがある.

その後,中膜の平滑筋細胞の遊走・増殖,細胞外マトリックス産生およびその沈着が起こり,新生内膜が形成される(図1).

これと並行して内皮細胞の被覆が生じ,その間にも内膜は肥厚し,高度になると再狭窄に至る.
 一方,drug-eluting stent(DES)の留置後では,平滑筋細胞の増殖が抑制されるために,新生内膜の形成も遅延し(図2),ステント内腔側における内皮細胞の再生・被覆が抑制される1).

事実,DES留置4年後においても,完全な内皮細胞の被覆を認めないという報告がある2).すなわち,DESの使用は,動脈内膜のremodelingの遅延をもたらすために,短期間内の再狭窄を減少せしめ,ステント留置後の急性冠閉塞の激減に寄与した.しかし,動脈内腔側のストラットは露出した状態となり,血流と直接的に接するため,ここに易血栓性が生じ,逆に遅延型血栓発症の原因となっている.DES留置後のin-stent thrombosisは,1.2~3.0%と報告されているが,18ヵ月以内の血栓症・心臓死・急性心筋梗塞の発生率は,BMSよりもDESの方が多く,1~4年以内に限れば,血栓症の頻度はDESに多いとされている3)4).
 これらのステント留置後の再狭窄および血栓症に関する一般的な発生機構についてはすでに御承知であろう5)-7).これらは,BMSかDESかにかかわらず,ほぼ常に考慮すべき合併症である.しかし,ステントの挿入位置によって生じる再狭窄・血栓症を含む合併症の問題点については,術前の治療法の選択により,あるいはステント留置後の注意深い経過観察や抗血栓薬の選択により,ある程度は防ぎえるものと考えられる.これまで報告されてきたステント留置後の予後不良因子のうち,留置位置に関連する因子には,動脈分岐部のステント留置,石灰化病変部へのステント留置,さらに心筋架橋に関連した留置が挙げられる.これらについて次項より解説する.

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