<< 一覧に戻る

血栓症に関するQ&A PART6

3.脳 Q33 頸動脈狭窄に対する脳梗塞発症後のCEA施行時期についてご教示ください

北川剛

血栓と循環 Vol.19 No.1, 117-118, 2011

Answer
 脳梗塞発症後内頸動脈狭窄症が発見された場合,脳梗塞の再発予防のためCEAが有効であることが報告されている.

 脳梗塞出現後,CEAを行う時期を決定するためには症状出現後の急性期(2日~1週間以内など),亜急性期(1ヵ月以内など)の脳梗塞の再発率がどの程度かとその時期の手術リスクがどの程度かが問題となる.
 ECST,NASCETのデータをあわせて解析した結果,70%以上の頸動脈狭窄を合併しTIA,軽症脳梗塞を発症した場合,発症後30日以内の脳梗塞の発症率が4.9%と高く,脳梗塞発症後2週間以内にCEAを行うことが最も有効であり,それより遅れると脳梗塞予防効果が減少すると報告された1).最近では脳梗塞症状発症後の脳梗塞再発率はより高率であることが報告されており,軽度の脳梗塞発症後7日以内の脳梗塞発症率が11.5%,30日以内が15.0%との報告もある2).これらのことから有症状頸動脈狭窄に対するCEAは手術リスクがそれほど高くなければ,症状出現後,できるかぎり早期に行うべきであると考えられる.しかし急性期,あるいは亜急性期のCEAは待期的CEAよりやや手術リスクが高いとの報告がされている3).急性期,亜急性期のCEAの手術リスクとしては,血栓や不安定プラークを伴っている可能性が高く,術中塞栓症の危険が高いこと以外に,脳浮腫など再潅流障害が問題となる.
 これらのことから,どのような症例が脳梗塞の再発を起こしやすいかあるいはどのような症例の早期手術リスクが特に高いか,という検討がCEAの時期を決定するためには重要となる.
 まず,発症後早期に脳梗塞を再発しやすい画像所見上の特徴としては高度頸動脈狭窄の末梢に浮遊血栓を認める患者などが挙げられる.また症状としては頻回にTIAを起こす,あるいはTIAの頻度が増えてきている(crescendo TIAs)患者,あるいは最初の脳虚血症状出現の後,新たな脳虚血症状,あるいはより重い脳虚血症状が出現する(Stroke in evolution)などの症状を呈する患者などが挙げられる.
 TIA患者に対して高度頸動脈狭窄を合併し症状出現した後,早期の脳梗塞発症の危険が高い患者を検出し迅速に治療を開始するためのスコアリングシステムも検討されている.ABCD2スコア(表1)による評価を行い,3点以下はTIA発症後2日以内の脳梗塞発症率が1.0%と低かったが4~5点は4.1%と高く,さらに6点以上は8.1%と極めて高かったと報告されている4).

記事本文はM-Review会員のみお読みいただけます。

メールアドレス

パスワード

M-Review会員にご登録いただくと、会員限定コンテンツの閲覧やメールマガジンなど様々な情報サービスをご利用いただけます。

新規会員登録

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

一覧に戻る