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血栓症に関するQ&A PART6

3.脳 Q32 非心原性脳梗塞の再発予防のための抗血小板薬の使い分けはどのようにするべきでしょうか

棚橋紀夫

血栓と循環 Vol.19 No.1, 114-116, 2011

Answer
ガイドラインおよび最近のエビデンス

 非心原性脳梗塞の再発予防に対しては抗血小板療法が推奨される.表1,表2にそれぞれ本邦の脳卒中治療ガイドライン2009 1),2011年の米国心臟協会(AHA)/米国脳卒中協会(ASA)のガイドライン2)を示す.“脳卒中治療ガイドライン2009”1)においては,非心原性脳梗塞の再発予防にアスピリン(グレードA),クロピドグレル(グレードA),シロスタゾール(グレードB),チクロピジン(グレードB)が推奨されている.AHA/ASAガイドラインでは,非心原性脳梗塞に対しアスピリン,アスピリン+徐放性ジピリダモール,クロピドグレルが初回治療の選択枝であることが示されている.本邦のガイドライン,AHA/ASAのガイドラインともに,各薬剤の使い分けに関して明確な記載はない.抗血小板薬の選択は,患者のリスク因子のプロファイル,費用,忍容性,その他の臨床的特徴を参考に個別化するべきである.

 本邦で使用される各種抗血小板薬の特徴を以下に解説する.

1.アスピリン

 アスピリンは,血小板のcyclooxygenase-1を不可逆的に阻害する.安価であり非心原性脳梗塞の再発予防に最も多く使用される.アスピリン81mg(素錠)またはバイアスピリン100mg(腸溶錠)が投与される.ATT3)は,抗血小板薬は有意な非致死的脳卒中の低減効果を示し,オッズ減少率は25%であった.さらに,アスピリンの用量別効果についても75~150mgが血管イベントの低減率が最も高く,75mg未満の低減効果は有意ではないという結果が示された.アスピリンの主な毒性は消化管出血である.高用量ほどリスクが高い.325mg以下の低用量のアスピリンの重篤な消化管出血の年間発生率は0.4%であり,アスピリン非使用者の2.5倍である.アスピリンは脳出血のリスクも増加させるが,虚血性脳卒中のリスク減少よりも少ない.本邦では,ラクナ梗塞患者に対しアスピリンを投与すると年間1%位の脳出血が発症することが問題視されている.

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