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血栓症に関するQ&A PART6

3.脳 Q31 脳梗塞再発予防について,スタチンの効果を教えてください

中瀬泰然

血栓と循環 Vol.19 No.1, 111-113, 2011

Answer
はじめに

 脂質異常症は脳梗塞発症のリスクである.『脳卒中データバンク2009』によると全脳梗塞の28.2%に脂質異常症の合併が見られ,特にアテローム血栓性脳梗塞とラクナ梗塞では30%以上の合併を認めている1).

スタチンによる脳梗塞予防のエビデンス

 脳梗塞一次予防としての脂質異常症治療は,スタチンをはじめとする各種薬剤を用いたLDLコレステロール低下,中性脂肪低下を目指すことである2).大規模臨床研究では2004年にCARDS試験が報告された3).これは2型糖尿病患者を対象にアトルバスタチン10mg内服を行ったもので,平均3.9年の追跡で脳卒中の発症を48%減少させた.日本における臨床研究(MEGA Study)では,冠動脈疾患または脳梗塞の発症が食事療法のみ群では7.1%だったのに対して,プラバスタチン投与群では4.7%と減少しており,LDLコレステロール値低下によるハザード比の減少は34%であったと報告された4).これらの結果は主に冠動脈疾患を対象に研究されたが,スタチンによりLDLコレステロールを積極的に低下させることは脳梗塞発症予防効果があるという根拠になっている.
 一方,最近の脳梗塞再発予防としての大規模臨床研究にはSPARCL試験がある.これは6ヵ月以内の脳梗塞およびTIA患者に対してアトルバスタチン80mg内服を行ったもので,5年間の観察でスタチン投与群における脳梗塞再発が16%抑制されていた.さらにLDLコレステロールが前値の50%以上低下した群では脳梗塞再発は33%抑制された5).またWOSCOPSやCAREなどの大規模臨床試験結果のサブ解析で,プラバスタチン投与群ではコレステロールの減少幅に有意差を認めなかったものの,冠動脈疾患発症や再発の有意な抑制効果が報告された6)7).これらの結果からスタチンにはコレステロール減少作用以外の動脈硬化性疾患予防効果があると考えられるようになっている.

スタチンの多面的効果

 スタチンの作用機序は,肝臓においてアセチルCoAからメバロン酸を合成する過程でのHMG-CoA還元酵素を阻害することである(図1).

これによりピルビン酸からコレステロールが合成される行程を抑制している.しかし近年,血管内皮細胞におけるHMG-CoA還元酵素阻害がeNOS合成を促進していることが報告された8).eNOS合成が促進されるとNOの産生が高まり,細動脈の弛緩9)や内皮-白血球接着の抑制10)などがもたらされると考えられる.また血管平滑筋に対する作用として,細胞分裂過程のG1期からS期に移行する過程を阻害することでその増殖を抑制したり11),フリーラジカル産生を抑制したりするという報告もある12).さらに,血小板においてはトロンボキサンA2の産生を抑制したり13),血小板内コレステロール含有量を減少させたりする14)効果もあることが報告されている.これにより血管壁への血小板沈着が抑制され,血小板凝集が阻害されると考えられる.
 われわれも脳梗塞再発予防としてのスタチンの抗炎症作用を研究してきた.外来通院中の慢性期脳梗塞患者について炎症マーカーを経時的に測定したところ,スタチン内服群でIL-6が有意に低下していることが分かった15).また,すでにスタチンを内服していた脳梗塞患者ではスタチン内服をしていなかった患者に比べて3ヵ月後の予後が良好であるという報告もある16).Blancoらの報告によると,スタチン内服患者が脳梗塞発症後急性期にその内服を中止すると,中止しなかった群に比べて有意に症状の悪化が認められた17).さらに,LDLコレステロール値が130mg/dL未満かつ高感度CRPが2.0mg/L以上の症例に対してロスバスタチン20mg内服を行った国際大規模臨床研究では,最長5年(中間値1.9年)の追跡でロスバスタチン投与群における脳梗塞発症が有意に低下していた(ロスバスタチン群0.12/100人年対プラセボ群0.25/100人年,ハザード比0.49) 18).この研究では,スタチンがLDLコレステロール減少のみでなくCRPの低下,すなわち炎症反応の抑制により脳梗塞の発症を抑制していることを示唆している.

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