Answer 脳循環改善,neurovascular unit,そして虚血耐性  脳梗塞の最も有用な治療は,脳虚血による障害反応が生じる前に虚血を解除することであり,その点で組織型プラスミノゲン・アクチベーター(t-PA)は期待される1).本邦でも2005年に使用承認されたが,発症後3時間以内に投与可能な症例に限られるとともに,厳密な適応が定められており,治療の適用が実現できない症例が多い.本邦においては多施設のデータで脳梗塞全体の2.5%のみに適用されていた2).たとえtherapeutic time windowが4.5時間に拡大して適用されても3),なおその状況には変わりがないと考えられる.そこで脳虚血によって引き起こされるさまざまな細胞障害メカニズムから脳組織を保護し,虚血巣の拡大を防ぐ治療が望まれている.これまでに神経細胞保護を目指した治療薬の開発が多数行われてきた.脳虚血急性期における虚血中心部とペナンブラ領域を含む虚血周辺部では,その血流低下の程度の違いにより異なった病態とその進行を示している可能性がある.この病態の差異はt-PAによる再灌流療法をあてはめて考えると理解しやすい.虚血中心部においては再灌流により出血性脳梗塞の合併が増加する.その病態は血液脳関門の破綻であり,これがt-PA治療のtherapeutic time windowに大きく関与している.したがって血液脳関門を構成する細胞やこれに関与する物質を含むneurovascular unit4)(図1)の保護が必要である.