血栓症に関するQ&A PART6
3.脳 Q28 日本人の低リスク心房細動患者の脳塞栓症予防に抗血小板薬が有効というエビデンスがありますか
血栓と循環 Vol.19 No.1, 99-101, 2011
Answer
はじめに
心房細動は,最も代表的な不整脈であり,加齢とともに有病率は増加し,脳梗塞の発症リスクが高い1).急性期脳梗塞に関する全国調査(Japan Multicenter Stroke Investigator’s Collaboration:J-MUSIC)では,発症後7日以内に入院した脳梗塞患者の21.1%に心房細動を合併していた2).また,心房細動患者は,非心房細動患者と比べて入院時の重症度が高く,発症28日以内の死亡率が高い.それゆえ,抗血栓薬による脳梗塞の発症予防が必須である.
CHADS2スコアによる脳卒中リスクの評価と抗血栓療法
近年,心房細動を有する患者において,脳梗塞発症のリスクが集積すると脳梗塞の発症率が上昇することが注目され,CHADS2スコアが提唱されている3).うっ血性心不全,高血圧,年齢(75歳以上),糖尿病,脳卒中またはTIAの既往の頭文字をとって命名されたスコアで,前4つの項目には1点を,脳卒中またはTIAの既往には2点を給付し,合算して算出する.CHADS2スコアが高いほど脳梗塞発症のリスクが高くなる(表1).
心房細動治療ガイドライン(2008年改訂版)では,非弁膜症性心房細動における中等度のリスク評価にCHADS2スコアを取り入れ,2つ以上のリスクを有する場合は,ワルファリン療法を勧め,1つの場合は,同療法を考慮してよいと記載されている4).
心房細動患者における抗血小板薬のエビデンス
これまで,心房細動患者を対象に脳梗塞の予防を目的として行われた抗血栓療法の大規模臨床研究をメタアナリシスした成績によれば,用量調節法によるワルファリン療法は極めて有用であり,コントロールに対して64%の脳卒中予防効果がある.一方で,アスピリンはワルファリンよりも劣るが,22%の脳卒中予防効果がみられる5).
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※記事の内容は雑誌掲載時のものです。