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血栓症に関するQ&A PART6

2.検査・診断 Q17 血小板凝集能の標準化に対して,国内,国外でどのような取り組みをしていますか

冨山佳昭

血栓と循環 Vol.19 No.1, 65-66, 2011

Answer
はじめに

 血小板凝集検査は,血小板無力症やBernard-Soulier症候群などの血小板機能異常症の診断にきわめて有用な検査法である.本邦では,諸外国に比べ血小板凝集検査を施行できる施設が多く,その結果として本邦からトロンボキサン受容体異常症やGPVI欠損症が世界に先駆けて報告され,その病態や分子異常が明らかにされてきた.その後も本邦から,多くの血小板機能異常症例が報告されている.しかしながら,血小板凝集検査法はいまだ標準化されていないことも事実である.

国際的な取り組み

 国際的な取り組みとしては,国際血栓止血学会(ISTH)における学術標準化委員会(SSC)の血小板生理学部会(Platelet physiology)(座長:Dr. Marco Cattaneo)において,血小板機能検査に関して世界で最も汎用されている透過光血小板凝集検査(比濁法)に関してその標準化が試みられている1).標準化の方法は,アンケート調査が主体で血小板機能検査を行なっている専門機関にインターネットを用いたサーベイを行なった.ヨーロッパおよび北米を中心とした368施設からの回答があり,日本からの回答は7施設のみであった.その集計結果を検討し,2010年のカイロ大会にて最終案が報告された.以下にその概要を示す.この内容はあくまでアンケート調査に基づいた経験則であり,エビデンスに基づいた成績ではない.

1.血小板凝集検査の適応患者

 透過光血小板凝集検査は出血傾向を有する症例に関して適応があるとした.血栓症に関してや,抗血小板薬のモニターに使用することに関しては意見の一致を見なかった.したがって,SSCとしては血栓症患者や抗血小板薬モニターに対しての血小板凝集能検査の意義は明らかではないとの見解である.
 後に述べる,日本血栓止血学会が行った本邦でのアンケートでは,本邦において抗血小板薬のモニターとして血小板凝集検査が用いられていることがうかがえるが,その科学的根拠はほとんどない.血小板凝集抑制と臨床的な血栓イベント抑制に1:1の関係は見出せないからである.

2.採血条件

 採血条件に関しては,少し安静後に採血すべきであり,喫煙後少なくとも30分は採血しないこと,またカフェイン摂取後2時間は空けること.薬の服用に関しては,可逆的な血小板阻害作用を有するNSAIDは少なくとも3日間は中止し,非可逆的阻害剤であるアスピリンは10日間の中止が必要であるとした.
 空腹時での採血および服用薬の中止に関しては,一定のコンセンサスは得られなかった.本邦では一般的に空腹時に採血されることが原則とされており,海外では患者の訴えも多いため空腹時での採血は困難なようである.

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