血栓症に関するQ&A PART6
2.検査・診断 Q14 冠動脈内血栓の内視鏡からの解析について教えてください
血栓と循環 Vol.19 No.1, 59-60, 2011
Answer
血栓の色調
血管内視鏡で見た血栓(図1)は,その色調から白色血栓,赤色血栓とそれらの混合した赤白混合血栓に分類できる.白色血栓はフィブリン・血小板血栓であり,そのフィブリンネットワークに赤血球が捕らえられて混合血栓となる.血流がうっ滞するほど,より多くの赤血球が捕らえられ,より赤色調の強い混合血栓となる.そのため,血管壁に存在する破綻した黄色プラークに,まず白色血栓が付着し,白色血栓内に赤血球が捕らえられて混合血栓となるが,狭窄がより高度となるほど,すなわち閉塞している中心部の血栓ほどより赤色調の強い混合血栓となる.
また,破綻したプラークから内容物である黄色調の脂質成分が血管内腔に突出している場合に,それらが白色血栓と混合して「黄色血栓」とも言うべき状態の血栓が観察されることがある.
病態による血栓の違い
不安定狭心症の責任病変で,高度狭窄はあるものの血流が維持されている病変においては,綿様に形成され細かく断片化しては流されて行くフレッシュな白色血栓が見られることがある.発症からある程度時間が経って,比較的安定化した不安定狭心症においては,このように断片化して流されていくような綿様の白色血栓は減少しており,器質化血栓の存在が示唆される.典型的なプラーク破裂によって発症した急性心筋梗塞の責任病変では,上述のようなフレッシュな白色血栓~混合血栓あるいは黄色血栓が見られ,断片化した大小さまざまなプラーク・血栓混合物が流されていく像が観察される.また,心房細動に由来する血栓塞栓症として発症したと考えられる急性心筋梗塞では,表面平滑で比較的古いと思われる赤色血栓が観察されることがある.このように,血栓の血管内視鏡像から冠動脈内の局所病態をある程度推察することができる.
動脈硬化と血栓
冠動脈内における血栓形成が動脈硬化進展の主要な機序と考えられている.急性の虚血性イベントである急性冠症候群(不安定狭心症,急性心筋梗塞,およびステント血栓症を含む)のみならず,冠動脈の狭窄進行による安定労作性狭心症の発症にも冠動脈内における血栓形成が重要な役割を担っている.多量の血栓が形成されて冠動脈内腔が閉塞~亜閉塞となれば急性冠症候群を発症するが,虚血を生じるほどに血流が障害されなければ無症状に経過する.プラークの破裂あるいは血栓が器質化する過程で,冠動脈内腔の狭窄は進行する.プラークの破綻と治癒過程は繰り返されるため,それに伴って狭窄度も徐々に進行する.狭窄度が高度となって,労作によって虚血が誘発されるようになると安定労作性狭心症が発症する.
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