<< 一覧に戻る

患者から医師へのシグナル

第85回「ありのままの自分を出せる,医療との出会い」

横田和子

THE LUNG perspectives Vol.27 No.3, 80-83, 2019

人生最初の大きな病気は,20代の後半にかかった結核です.今から60年近く前のことです.当時,結核の治療は手術が主流で,肋骨を何本も切除する大がかりなものでした.まだ独身だった私は「体に傷をつけるのは嫌だ」と強く拒否し,両親の勧めもあって,パスとストレプトマイシンの併用で治す道を選んだのです.
ところが,薬を飲んでもいっこうに症状は良くなりません.しばらくしてリファンピシンという強力な薬が開発され,重い肝機能障害が残ることも承知の上で使ったところ,幸いなことに薬が効いてくれました.85歳になりますが,これまで再発もせずに過ごせています.
その後,とくに大きな病気とは無縁の生活をしていましたが,60歳の頃に肺気腫[現在の病名:慢性閉塞性肺疾患(COPD),以下COPD]と診断されました.私は外国暮らしが長く,神経をすり減らす仕事をこなすのに,とにかくタバコが手離せなかったのです.周囲からは禁煙するよういわれていましたが,タバコを吸えば翻訳も頭が冴えて,なかなかやめられませんでしたね.
COPDの治療を始めて,さすがにタバコはやめましたが,息苦しさは残ります.COPDとつきあいながらの生活となりました.定期的な受診で症状をコントロールし,酸素療法を必要とするまでには至りませんでしたが,去年の5月,いっきに呼吸困難が悪化しました.とにかく歩くのが辛い,家事をこなすのもひと苦労です.あまりの息苦しさに当時の主治医に診ていただいたところ,サッと顔色が変わったのは見逃しませんでした.朝7時半に受付をした後,血液検査にレントゲン,さらに急遽CTまで撮ることになって,終わったのは17時半です.主治医に呼ばれ,「横田さん,肺がんです」と告げられました.翌日にあらためてPETも撮って,ステージⅢaと確定診断されました.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

一覧に戻る