特集 呼吸器領域の治療における展望と問題点
注目されるIL-1β阻害薬の治療成績―心血管疾患と肺癌に対する期待―
THE LUNG perspectives Vol.26 No.4, 50-52, 2018
Interleukin(IL)-1βは炎症経路において,重要な役割を果たす代表的な炎症性サイトカインである.Shimokawaを中心とする我々のグループは,すでに1990年代後半よりその重要性に着目し,IL-1βが冠動脈攣縮(冠攣縮)や冠動脈硬化の進展に寄与することを報告している.本稿では,IL-1βに関する我々の知見およびIL-1β抗体であるACZ885(一般名:カナキヌマブ)の効果を評価したCANTOS試験について概説する.CANTOS試験は,慢性炎症が持続する(=高感度CRPの高値が持続)心筋梗塞の既往のある患者において,カナキヌマブの二次予防効果を検討した国際多施設共同試験であり,心筋梗塞の発生を24%減少させたほか,肺癌による死亡率を77%も減少させた.この試験は,Shimokawaらが1990年代後半から2000年代前半に行ったIL-1βの慢性投与によるブタ冠動脈の動脈硬化・冠攣縮の基礎研究を1つの理論的根拠にしている.Shimokawaが本邦の研究責任者を務めたCANTOS試験は,虚血性心疾患の成因に,従来のLDL-Cに加えて,慢性炎症が重要な役割を果たしていることを初めて明らかにした点で学術的意義があり,2017年8月に開催された欧州心臓病学会において研究代表者のRidker(ハーバード大学)が報告し,同時にN Engl J Med誌に論文発表された.
「KEY WORDS」IL-1β,炎症,冠攣縮,心血管疾患,肺癌
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。