世界保健機関(WHO)によると,世界的に2020年の疾患別死亡原因の第3位が慢性閉塞性肺疾患(COPD),第4位が下部呼吸器感染症(肺炎など)と予測され,呼吸器疾患による死亡者数の急増が懸念されている.日本人の死因としては今後も,肺炎,肺癌,COPDが循環器疾患と並んで死因の上位を占めるといわれ,その死亡の大多数が高齢者で占められる.これら呼吸器疾患の治療においては薬物療法が重要であるが,その治療は長期にわたることも多く,高齢者では薬物による有害事象が生じやすい一方,アドヒアランスが低いなどの特性を踏まえた戦略が重要である.本稿では,2015年12月に刊行された『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015』を考慮して,高齢者におけるCOPDならびに肺炎の薬物療法上の留意点について述べる.
「KEY WORDS」COPD,高齢者肺炎,薬物有害事象,高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015