CPC日常臨床から学ぶ
同時期に気胸で入退院を繰り返していた若年男性の3症例
THE LUNG perspectives Vol.26 No.4, 4-9, 2018
『THE LUNG perspectives』誌におけるCPC症例とは「日常の臨床でよくみられる疾患ではあるが臨床上,実際に起きた様々な疑問点,珍しい所見,死因に対する疑問などを病理解剖により解き明かしていくことが狙える症例」と定義されている.筆者自身,大学院時代は東北大学抗酸菌病研究所の呼吸器内科で臨床の研鑽を積みながら,病理学部門の高橋 徹教授のもとで病理解剖を習得しつつ「難治性気管支喘息患者の気管支平滑筋の病態」に関する研究に取り組み,その後の米国がん研究所(NCI)留学中には,「肺癌組織における癌細胞の不均一性と遺伝子変異の関係」を研究対象とした.帰国後,1995年からは新規に間質性肺炎・肺線維症の基礎と臨床の研究に取り組んできたこともあって,病理組織で呼吸器疾患の理解を深めるのが本職といってもいいような経歴をもつ.しかし,だからこそ今は,病理組織を観察する目的は,診断をつけることよりも病態を理解することのほうがはるかに重要であることを痛感している.
狭窄性細気管支炎(constrictive bronchiolitis obliterans;CBO)はBOと総称される閉塞性細気管支炎(bronchiolitis obliterans;BO)のなかでも,炎症細胞による内腔の閉塞からなるproliferative BOと区別するための疾患概念であり,種々の原因に基づくことが知られている.実際には純粋なCBOが稀な疾患であるのは,異なる遺伝子背景や環境因子に基づく異質な疾患群である特発性肺線維症(IPF)に絵に描いたような蜂巣肺をみることが稀であるのと類似している.
本稿では,筆者が帰国して東北大学加齢医学研究所附属病院(後の東北大学病院)の呼吸器内科に所属していた折,同時期に経験した,気胸を繰り返して入退院を繰り返した難治性の20歳代男性の3症例を提示する.このうち肺全体をみることができたのは症例3の脳死肺移植時摘出された両側の肺のみである.
「KEY WORDS」狭窄性細気管支炎,間質性肺炎,慢性過敏性肺炎,家族性肺線維症
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