いま振り返る研究の日々
第17回 患者は臨床研究の原点(その3)
THE LUNG perspectives Vol.26 No.3, 87-91, 2018
肺線維症(間質性肺炎)は今や珍しい病気ではなく,我が国では呼吸不全で在宅酸素療法を受けている患者の原因疾患の第2位を占める.ここに紹介する患者は29歳女性,リウマチ様関節炎に伴った肺線維症であった1).主訴は体動時の息切れと乾性咳嗽で肺線維症によくみられる症状である.ただ呼吸数が異常に多く,入院してから安静にしていても30/分を数えたことが特徴だった.肺聴診では “肺胞音” が著明で,心拍数96/分と多い.四肢関節変形・腫脹なし.赤沈亢進,RA弱陽性(前医では陽性),微熱がある.胸部レ線写真では,肺の縮小,両下肺野を中心に網状,粒状影がび漫性に分布し,両中肺野にブラがある典型的な “リウマチ肺” の画像所見を呈した.肺機能は,拘束性換気障害,肺拡散能低下があり,安静時の動脈血ガスは動脈血酸素分圧(PaO₂)79.5mmHg,動脈血二酸化炭素分圧(PaCO₂)36.3mmHg,pH 7.425で正常範囲.過換気はない.28%ベンチマスクで10分間酸素吸入するとPaO₂は93.3mmHgに増加したが,呼吸数は34/分と変化しなかったので,安静時には低酸素刺激は呼吸数増加に働いていないと判断.死腔(30mL)負荷では軽度の呼吸数増加(38/分),PaO2の軽度低下(65.1 mmHg),PaCO₂の軽度増加(42.0mmHg)があったが,pHは不変だった.死腔負荷は低酸素+高二酸化炭素応答検査の代用となるものだが,この2つの刺激に対してある程度応答すると診断した.
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。