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患者から医師へのシグナル

ハタチの誕生日がもたらした奇跡の巡りあわせ

中村奏子

THE LUNG perspectives Vol.26 No.2, 96-100, 2018

私は今年22歳になりますが,人生の約半分を病気と付き合っています。中学校1年生の夏頃に,ひどい咳が続くようになり,近所のクリニックを受診しました。入学してから剣道を始めたのですが,どうも屋内で咳がひどくなっていたので過敏性肺臓炎を疑われ,咳止めを処方されて様子をみることになりました。ですが,症状はどんどん悪くなる一方でクリニックでは診きれない程になっていました。そこで,大きな病院の小児科の受診を勧められ,地域の基幹病院を受診することになりました。同じ年の9月に初めてその病院にいったのですが,自分の誕生日に人生初めての入院をすることになったので,その日のことはよく覚えています。1週間程で退院できたのですが,すぐに調子が悪くなってしまって,その翌日からまた入院。結局,12月24日まで約3ヵ月間入院することになりました。その間,息苦しさと咳は続きましたが,検査をしても異常はみつからないため,原因不明で心因性,つまり,心の問題だと言われました。気休め程度に喘息の基本的な薬を処方されたものの,息苦しさは続きます。「家庭に問題があって,家に居ると症状が出るのだろうから,病院にいた方がいい」と言われ,学校にも行きたい,友達とも遊びたい,それなのに入院を続けなければならなかった。家族のことが大好きなのに「家庭に問題がある」とも言われ,反論しても「心の問題」。その一言で済まされてしまう。気づかないうちに私の中で諦めの気持ちが強くなっていて,家族が「病院を変えよう」と言ってくれても,「もしも,新しい病院でも心の問題と言われたらどうしよう……。それはもう嫌だ」という気持ちが勝ってしまう程になっていました。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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