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医療と哲学

第56回 医療と宗教について

竹村牧男

THE LUNG perspectives Vol.26 No.1, 90-92, 2018

私の専門分野は,仏教学である。一口に仏教と言っても,そこには種々様々な思想があるが,その中,世界はすべて心が映し出したものに他ならないと説く唯識思想は,概して大乗諸宗の世界観の基礎をなしているといえる。この唯識思想には,認識論,言語論,存在論などの精緻な哲学があるとともに,人間の心理の精細な分析もある。心の中でも中心になるものを心王と呼び,それに眼識,耳識,鼻識,舌識,身識,意識の五感と第六意識のみならず,末那識,阿頼耶識を説いて,八識を数えている。のみならず,これらとともに働く個別の心を心所有法(略して,心所)として,善の心や煩悩・随煩悩の心等,52の心を分析している。仏教は身体の方面についてはあまり詳しく説いていないが,心の世界の状況とその作用については,詳細に論じているのである。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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