MEDICAL TOPICS
組織透明化技術CUBICを用いる肺がん細胞の転移解析
THE LUNG perspectives Vol.26 No.1, 72-76, 2018
がんの基礎研究では,がん細胞株をマウスへと移植する担がんマウスモデルが古くから用いられてきた。20~30年前までは担がんマウスでの腫瘍の大きさの変化は目視での観察が主であった。しかし,CTやMRI,またルシフェラーゼの発光を応用した生物発光イメージング法など,近年の様々な観察技術の目覚ましい発達により,深部臓器の微小ながん転移を経時的に観察することが可能となっている1)。このような急速に発展した技術によってがん病態のin vivoでの理解は深まっているが,いまだ臓器深部のがん細胞を可視化する技術や,個体もしくは臓器レベルで1細胞解像度を有する安定した観察系は確立されていない。そこで我々は透明化手法に着目し,がん微小転移の観察のための新たな技術基盤の開発を試みた。
透明化手法は特に神経研究分野で着目されてきた技術であり,多くの手法が開発されてきている2)。我々はその中でも水溶性透明化試薬に着目し,化合物スクリーニングを行うことによって成獣マウス全脳イメージングを行うための透明化手法clear, unobstructed brain/body imaging cocktails(CUBIC)を開発した3)。この透明化手法は従来の透明化手法と異なり色素を多く含む臓器にも応用が可能であり,ついには成獣マウスの高度な透明化にも成功した4)。透明化した臓器やマウス個体は深部までレーザーを透過することが可能になるため,高解像度による3Dイメージングが可能となり,個体もしくは臓器のまま1細胞レベルでの観察ができるようになった。本稿ではこの新たな技術を近年我々ががん研究で活用した最新の成果について紹介する5)。
「KEY WORDS」3Dイメージング,肺転移モデル,EMT
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