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特集 免疫学の新展開と呼吸器疾患

序文

萩原弘一

THE LUNG perspectives Vol.25 No.4, 8, 2017

本号は免疫学の特集である。
感染症,腫瘍,炎症(免疫学的異常),形態異常,代謝異常。呼吸器病学は,多くのサグループ疾患からなる多彩な疾患群を扱う臨床医学分野である。なかでも,免疫学関連疾患は呼吸器病学の大きな部分を占めている。
言うまでもなく,近年のこの分野の進歩は著しい。特に,腫瘍免疫治療が実用化されたことは,免疫学の風景を一変させた。講演で語られる腫瘍免疫に関与する分子,シグナル,細胞のネットワーク図は,これまでに呼吸器病学で使用されたどのようなネットワーク図よりも複雑だが,聴衆はその複雑な図を必死に理解しようと耳を傾けている。
複雑なネットワーク図をみていると,人工知能(AI)やディープラーニングで示されるニューラルネットワークと,大きな類似性があるようにもみえる。免疫学的ネットワークでも,ニューラルネットワークが評価関数の最小値を求めるような調節プロセスが働いているのだろうか。意外な分野に意外な類似点が感じられる。
腫瘍免疫以外にも,免疫学は確実に呼吸器病学を進歩させている。本号の特集原稿では,複数の記事がインターロイキン(IL)-33に関して述べている。ざっと要約に目を通しただけでも,その潮流が明らかに感じられる。IL-33が呼吸器病学の新たなキーワードだ。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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