近年,組織や細胞における遺伝子発現を網羅的にとらえることのできるトランスクリプトーム解析が,そのコストの低下,機器や試薬の取り扱いの簡便化などによって身近なものとなってきている。肺線維症や慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease;COPD)などの肺疾患の研究分野においても,臨床・基礎の双方においてその網羅性を生かし,仮説非依存的な新規病態マーカーの探索や,病態の背後にある分子メカニズムの解明のために利用されている。本稿では,トランスクリプトーム解析の技術的概要について俯瞰したのち,昨今の肺研究分野におけるトランスクリプトーム解析に基づく報告を概説し,その将来展望について述べる。
「KEY WORDS」肺線維症,COPD,トランスクリプトーム,1細胞トランスクリプトーム,データベース,線維芽細胞,ネットワーク解析