CPC日常臨床から学ぶ
好酸球性肺炎の像を呈し全身播種に至った肺接合菌症の1例
THE LUNG perspectives Vol.24 No.4, 2-9, 2016
肺接合菌症は接合菌門のMucor目に属する真菌による肺感染症である1)。本感染症は,血液悪性腫瘍の化学療法などで発生する好中球減少症の患者や造血幹細胞移植後患者,さらに免疫抑制剤を投与されている患者に主に発症すると報告されている1)。症状は発熱,咳,呼吸困難,胸痛など非特異的な症状で発症することが多いが,本病原体は血管侵襲性が強く肺組織の壊死を起こし,空洞形成さらには致命的な喀血を起こすこともある。診断が遅れ,病状が進行すると対側肺や全身臓器への血行性播種が惹起され予後不良となる。真菌症は侵襲性真菌症,非侵襲性真菌症,菌体に対するアレルギー反応など様々な病態を呈することが知られているが,侵襲性真菌症とアレルギー反応の同時発症例はこれまで報告が限られている。今回われわれは腹部大動脈瘤破裂術後に発症した,好酸球性肺炎の像を呈し全身播種に至った肺接合菌症の剖検症例を経験したので報告する。
「KEY WORDS」肺接合菌症,深在性真菌症,好酸球性肺炎,Cunninghamella bertholletiae
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。