「Summary」慢性閉塞性肺疾患(COPD)と特発性肺線維症(IPF)はともに喫煙が危険因子であり,肺の老化と関連している。COPD 患者の肺線維芽細胞は細胞老化を認め,組織修復に関わる増殖能,遊走能,およびコラーゲンゲル収縮能は低下している。IPF 患者の肺線維芽細胞では逆に,増殖能,遊走能,コラーゲンゲル収縮能が亢進しており,これらは過剰な組織修復反応すなわち線維化促進反応を示している。正常肺線維芽細胞にたばこ煙を曝露させると,細胞老化が生じ,組織修復能が低下する。一方で,細胞老化に至らなかった線維芽細胞の線維化促進反応は著しく亢進する。たばこ煙で誘導される肺線維芽細胞のこの2方向の形質転換は,COPD およびIPF にみられる異なる特徴を部分的に説明しうる。すなわち肺線維芽細胞の老化から,両疾患の発症機序の一端がみえる。そして,この異なる2つの性質は,グルタチオンやN-アセチルシステインなどのアンチオキシダントによって,ともに誘導されにくくなる。
「Key words」慢性閉塞性肺疾患,特発性肺線維症,たばこ煙,細胞老化,線維化