「Summary」加齢に伴う生理的な呼吸システムの劣化は呼吸不全の発生を加速する可能性がある。わが国では慢性呼吸不全の原因疾患として慢性閉塞性肺疾患(COPD)が最多と考えられるが,近年,肺がん,間質性肺炎なども増加している。治療面では一定条件下の酸素療法が慢性呼吸不全の生命予後を改善するが,高齢者においても同様であるとのエビデンスはまだない。呼吸不全では侵襲的人工換気以外に非侵襲的換気療法もよく実施されるが,その治療成績は入院日数,死亡率などにおいて後者が優れているとの報告もある。急性増悪時に高齢ほど侵襲的人工換気などの積極的治療が回避される傾向はあるが,だからといって高齢者の死亡率が一様に高い訳ではない。さらに非腫瘍性肺疾患のターミナルは腫瘍性肺疾患に比べ予後予測が困難であり,高齢者における治療選択・緩和ケアの導入を困難なものとしている。高齢呼吸不全の診療には日本人の感覚にあった対策が必要である。
「Key words」COPD,酸素療法,MV,緩和ケア
「Key words」COPD,酸素療法,MV,緩和ケア